早稲田大の同窓会と言えば「校友会」だ。慶應大の連合三田会と異なり、大学職員が事務局を担い、会長は大学総長。会員数は約63万人にも上る。校友会のもとには稲門会と呼ばれる卒業生組織がある。地域稲門会、海外稲門会、職域稲門会、年次稲門会、体育各部の稲門会など、登録されているのは1376団体に上る。この早稲田OB・OGたちが動き始めている。
今年の3月、早大本部キャンパスに歴史館が開館したが、数多くの稲門会の中で唯一紹介されたのが稲門医師会だ。関係者は「医学部設置に向けた布石」と見ている。
早大に医学部はないが、卒業・中退し、医学部に進学する学生は意外に多い。そして2016年が稲門医師会結成された。会員交流や大学との学術連携などが目的で、医師190人のほか、歯科医師、薬剤師、看護師など計323人の会員で構成されている。
慶應大との「差」は医学部の存在だと思いを巡らす卒業生は多く、「早稲田の病院で死にたい」という声もある。11月に就任した田中愛治総長が「単科医科大学を吸収合併する戦略に絞って考えていく」と述べており、その期待が高まっているのだ。
稲門医師会幹事長の中山久徳さんは、統一見解ではないと断りながら、こう語った。
「法律を変える必要があるが、米国のように大学を卒業後に医師になる人のためのメディカルスクールがあってもいい。その場合には早大出身のOBに協力してもらって……なんて話題は、高田馬場で開く飲み会でよくあります」
早大生が集う東京・高田馬場。あるレストランで11月下旬、「どうすれば成功できるか」「将来の夢は何か」といった議論が交わされていた。ベンチャー稲門会の会合だ。早大卒の若手起業家や1部上場企業の役員など30人が集まった。
14年にスタートし、会員は約100人。会員向けの定期的な交流会やセミナーの開催に取り組んでいる。
「有名な起業家から助言をもらえ、満足する会員も増えた。交流から新しい商談や契約につながることもある」(平野哲也事務局長)