大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
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人間の免疫システムが“自然”のままに働けば、皮膚の乾燥をきっかけにアレルギーを発症するリスクが高まる(写真:getty images)
人間の免疫システムが“自然”のままに働けば、皮膚の乾燥をきっかけにアレルギーを発症するリスクが高まる(写真:getty images)

 空気が乾燥する冬は、皮膚の乾燥も気になる時期です。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、皮膚と免疫機能について語ります。

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 日本の伝統工芸品である漆器(しっき)に使われる「うるし」は、触ると皮膚がかぶれます。その昔、うるし職人はうるしを少しずつなめることで、かぶれを予防したそうです。うるしはうるしの木からとれる樹液であり、その成分のウルシオールが、かぶれの主成分です。素人には扱うことが難しいうるしですが、うるし職人は積み重ねた経験から、うるしをなめることでかぶれが予防できることに気がつきました。ではどうして、なめることでかぶれが予防できるのでしょうか?

 人間の体には免疫という優れた機能が存在します。この免疫によって、私たちは風邪をひいても治りますし、風疹ワクチンを2回注射すれば、風疹にかかることはまずありません。外から侵入してくるウイルスや細菌を、敵として正しく認識し戦う機能が、人間には免疫システムの一つとして備わっています。免疫は敵を記憶することができます。そのおかげで、はじめての敵には準備不足でも、同じ敵が来た場合、準備万端でやっつけることができるのです。

 しかしながら、免疫もいつでも完璧ではありません。敵に過剰に反応したり、間違えて反応することもあります。アレルギーとは本来、寄生虫に対する免疫反応が間違って起きたものと考えられています。アトピー性皮膚炎は、皮膚からの侵入を試みる寄生虫を排除するため、かゆみとして知覚し、ひっかく行為を引き起こすための免疫システムが誤作動したものと考える学者もいます。

 さて、私たち人間は口から栄養を摂取する生き物です。皮膚から侵入してくるのは、寄生虫などの敵。そうなると、口から入ってきたものは安全で、皮膚から侵入してきたものは危険である可能性が高くなります。人間の免疫は、食べたものは安全で、皮膚から侵入してきたものは敵として覚える免疫システムを持っています。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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