高齢者が陥る老年症候群の一つがフレイル(虚弱)。体が衰えて要介護の手前となる状態で、低栄養が原因の一つになっている。元気で長生きするため、高齢期のフレイルと中年期の生活習慣病を防ぐ食事術と栄養学を知っておきたい。
「女性は60代ごろになると、運動器の老化が顕在化します。その背景として、栄養素ではビタミンDが一番大きな問題だと思います」
「日本と韓国の女性は血中のビタミンD濃度があるべき数値より下回っていると、国際骨粗鬆症財団から警告が出ています。現在、本当に危機的な状況です」
東京都内で11月開かれた「食育健康サミット2018」で、桜美林大学老年学総合研究所の鈴木隆雄所長はこう訴えた。骨を丈夫にするため、カルシウムの重要性は長年叫ばれてきた。その吸収を助けるビタミンDの不足も、高齢者の骨折リスクを高める。そんな“新常識”が、近年データで明確になってきた。ビタミンDは、研究者が現在最も注目する栄養素の一つだ。
日本人の食事摂取基準によると、成人の摂取の目安量は1日5.5マイクログラム。ただ、これは健康な成人の目安で、骨粗鬆症財団は「高齢者はカルシウムを吸収する力が落ちており、10~20マイクログラムの摂取がよい」という。ビタミンDはきのこや魚に多く含まれており、積極的にとりたい。
食べ物だけでなく、日光浴によって皮膚でも合成される。美白意識から日焼けを気にしすぎると不足しがちで、栄養面からはマイナスと言える。それを象徴するのが、近年急増する子どもの「くる病」だ。
ビタミンD不足で骨の発育不良を招き、O脚になったり、背中が曲がったりする。戦後の栄養不足の時代に多かったが、飽食の現代の増加に研究者は注目する。
大阪大学医学系研究科の大薗恵一教授(小児科学)はこう話す。
「最近は食物アレルギーを気にする余り、子どもの食事の食材が増えず、(魚や卵に含まれる)ビタミンDが不足する危険性が高まっています。日焼けは地域や季節の紫外線量によって差がありますが、30分ほどは顔と両腕を露出して紫外線を浴びたほうがよいです」