米やパンなどの炭水化物を減らすと、ダイエットに有効でメタボを防げる。そんな糖質制限が最近の“常識”となり、大ブームだ。
ただ、効果を巡って研究者の見解は分かれる。必ずしも有効とは限らないというのが“新常識”と言える。
東京都の複十字病院糖尿病・生活習慣病センター長、及川眞一さんはこう話す。
「炭水化物のとりすぎがよくないのは事実ですが、制限すればよいとも言えません。体重や血糖値は短期的に低下しますが、長期的には糖尿病のリスクを高めるという研究結果もあります。総合的に考えると、炭水化物をむやみに制限する必要はなく、最もよい量が存在すると考えられています」
摂取エネルギーの目安は、炭水化物が全体の50~65%、脂質が30%までと言われるが、個人差もある。及川さんの研究によると、炭水化物を制限すると、相対的に脂質摂取が増え、長期的には体によくない可能性が考えられるという。
また別の見方もある。
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)の著者で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校内科学助教授の津川友介さんはこう話す。
「実は炭水化物のなかには、健康によいものと悪いものがあります。白米や小麦粉からつくったパンなどの精製された白い炭水化物は、糖尿病や脳梗塞のリスクを上昇させることが複数の研究で明らかになっています。一方で、玄米や全粒粉100%のパンなどの精製されていない茶色の炭水化物は、糖尿病や脳梗塞のリスクを減らすだけでなく、大腸がんのリスクも下げると報告されています。炭水化物をひとまとめにせず、その中身を考えることが重要です」
津川さんは世界の様々な研究報告をもとに、健康によい食事と悪い食事をエビデンス(科学的根拠)のレベルに基づいて五つに分類した。ただ、健康に悪いとは言っても、気をつけるべきは中年期ごろまでで、高齢期になると食事制限を緩めたほうがよいと指摘する。