「環境を変えて、また一からチャレンジしたい」
広島からフリーエージェント(FA)宣言していた丸佳浩外野手(29)が11月30日、巨人入りを表明した。5年総額“30億円超”とも”35億円”とも言われる大型契約だという。
世間の注目度も高いが、巨人ОBで、西武の監督としてチームを9年間で8度のリーグ優勝と6度の日本一に導いた森祇晶氏は苦言を呈する。
「丸を獲らなきゃクリーンアップはホントにいないのかな? 外野手は、陽(岱鋼)がいて(アレックス・)ゲレーロもいるのだから、若い選手が入る余地がなくなる。芽を摘むことにならないか?」
現在、巨人は、“金満”と言われた長嶋茂雄監督時代を上回る規模の補強を敢行中だ。球団史上ワーストタイの4年連続V逸の責任を取って辞任した高橋由伸前監督の後を受けて原辰徳氏が3度目の監督として復帰してから、既に前パドレスのビヤヌエバ内野手(27)を総額200万ドル(約2億2600万円)で、前オリックスの中島宏之内野手(36)を年俸1億5千万円の1年契約で、前西武の炭谷銀仁朗捕手(31)を年俸1億5千万円の3年契約で獲得している(金額は推定)。
全権監督として、大補強を推し進める原氏は炭谷を獲得するとき、正捕手争いを「フラット」と語った。競争という、現有戦力への刺激を求めているのだ。
競争が生む効果については、森氏も一定の理解を示す。現役時代、入団5年目の1959年から74年までの16年間レギュラーとしてV9時代の巨人を支えた名捕手だったが、当時の川上哲治監督は次々と有望捕手を入団させて競わせたという話は有名だ。当時を振り返りながらこう語る。
「たまんないよ(笑)。もっとも、振り返れば、あの刺激があったからこそ、負けるもんか、と必死になり、長くやれたのかも、と思います」
一方、今の巨人の補強には疑問を抱いているという。
「刺激ではなく後退になる可能性があります。例えば捕手は、小林がいて、宇佐見と大城がいて、阿部も復帰する。そこに炭谷が来る。阿部の復帰がなかったらまだわかるけど、せっかく育ちかけている宇佐見と大城が諦めてしまうかもしれない。これまで巨人がFAで複数年契約して獲った選手たちはどれだけ働いてる? 力のある選手がベンチにいてくれたら監督は楽だけど、若手が育たない。そこが問題なんです」
(黒田朔)
※週刊朝日2018年12月14日号