10月25日に開かれるプロ野球ドラフト会議で、最多球団からの指名が予想される大阪桐蔭の根尾昂。文武両道を果たし、人物としての評価も高く、「こんな子供に育てたい」とざわめくお父さんやお母さんもいるとか。この夏甲子園で輝いた根尾の高校時代を総括する。
この夏の決勝前夜、大阪桐蔭の西谷浩一監督までもが、投打の二刀流で快進撃を支えてきた根尾昂を「根尾さん」と呼んだ。
「移動中のバスでも本を読んでいますし、勉強も熱心。どっちが大人なのか、わからなくなるときもありました(笑)。“根尾さん”はまったく手のかからない選手でした」(西谷監督)
翌日、金足農との決勝で、相手エースの吉田輝星から本塁打をバックスクリーンにたたき込み、有終の美を飾り、史上初の2度目の春夏連覇へと導いた。
けなげで純朴で、それでいて理知的。定めた目標に邁進(まいしん)する姿勢が、彼の言葉から、練習態度から、そして試合での立ち居振る舞いから伝わってくる。試合で本塁打を何本打とうが、先発して16個の三振を奪おうが、満足するような言葉を聞いたことは一度もない。
大阪桐蔭の野球部やサッカー部、吹奏楽部の生徒は体育・芸術コースとなる「III類」に通う。複数クラスある中でも成績優秀者はAクラスに属され、中学時代にオール5の成績だった根尾も野球部では数少ないAクラスの生徒だ。ほかのクラスと違って、宿題も多く課されるという。同校の教師のひとりが、高校生としての彼の素顔をこう話す。
「野球部の練習の合間を縫って課題をこなすのは大変なことです。授業中に寝ているなんて聞いたことがない。何でも吸収する真綿のような高校生で、ファンになった教師も多く、既にサインをもらっています(笑)。彼ならこれから勉強しても、京大に合格できるかもしれません」
入学前から文武両道を歩んできた。共に医師を務める両親のもと、岐阜県は飛騨高山に育ち、雪のない季節は野球を、雪深くなる季節にはスキーに励んだ。生徒会長を務め、絵に描いたような優等生が、野球エリートが集う大阪桐蔭に入学したのだから、最初は戸惑いがあったに違いない。