漢方は胡散臭いと思い込んでいたが、医師向けの講習会に出てみたら案外効果があると知り、勉強を始めた。あるとき、メタボ体形の自分が漢方薬を飲んでどう変わるのか試してみたら、難なく減量に成功。花粉症や肩こりも治り、効果を実感したという。
西洋医学では治らない訴えや症状に対して、保険適用の漢方エキス剤で治療する医師が増えれば、多くの患者が救われるはずだ。
高齢者の場合、たとえば食欲不振には六君子湯(りっくんしとう)、六君子湯が飲めない場合は四君子湯(しくんしとう)を。関節痛を訴える人にはまず桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)を処方し、効果が薄いようなら附子(ぶし)を加えてみる。
「もちろん伝統的な漢方より確率は落ちますが、ファーストチョイスの処方で3~4割は当たります。効かないときはいろいろと試すと、最終的には7割以上の人が満足します。現代の感覚で処方する『モダンカンポウ』を通して、より多くの患者さんに漢方の良さを知ってほしいと思っています」(新見医師)
前出の小田口医師も「症状だけでもそこそこ合った薬を選ぶことができる」と話す。
「肩が寒いという訴えに対し、肩を覆う機能を重視して服を選ぶのが、症状別の漢方。一方、伝統的漢方は肩を覆うだけでなく手や足の先までサイズを測って、よりフィットする服を選ぶイメージです。そのほうが肩を含め全身がより快調になります。とはいえ平均で月に2万円強かかりますから、そこまで望まない場合は、保険診療の医療機関を選べばいい。とくに高齢者は長く飲み続けたほうがいい場合が多く、高くて続けられないとなったら本末転倒です」
高齢者に多い症状に適した代表的な漢方処方は、北里大学東洋医学総合研究所のホームページで、さまざまな症状によく使われる漢方薬を紹介している。(※)
通常は服用開始から1カ月を目安に効果をチェックし、効果が見られないようなら薬の量や処方を変えていくという。
漢方薬は体に優しいイメージが強く、「手術や西洋薬は嫌。漢方で治療したい」という人もいる。しかし小田口医師と新見医師は「西洋医学による治療を優先すべきです」と口をそろえる。