不正入試について謝罪する、東京医科大の宮沢啓介副学長(右手前、学長職務代理)と行岡哲男常務理事 (c)朝日新聞社
不正入試について謝罪する、東京医科大の宮沢啓介副学長(右手前、学長職務代理)と行岡哲男常務理事 (c)朝日新聞社
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医学部における男女の合格倍率と倍率比【1/3】 (週刊朝日 2018年8月31日号より)
医学部における男女の合格倍率と倍率比【1/3】 (週刊朝日 2018年8月31日号より)
医学部における男女の合格倍率と倍率比【2/3】 (週刊朝日 2018年8月31日号より)
医学部における男女の合格倍率と倍率比【2/3】 (週刊朝日 2018年8月31日号より)
医学部における男女の合格倍率と倍率比【3/3】 (週刊朝日 2018年8月31日号より)
医学部における男女の合格倍率と倍率比【3/3】 (週刊朝日 2018年8月31日号より)

 今の時代にこんな女性差別がまかり通っていたのか。東京医科大学は入試で女子らが不利になる得点操作をしていた。全国の医学部入試のデータを見ると、多くの大学で男子が女子よりも合格しやすい傾向がある。文部科学省は実態を調べる方針だ。果たして不正は東京医科大だけなのか。

【図表で見る】医学部における男女の合格倍率と倍率比はこちら

「大学病院にとっては医師採用試験の側面があるため、他の医学部でも同様の事態がある可能性が指摘されている」

 林芳正文科相が8月10日の会見でこう発言。医学分野では志願者に占める入学者の割合で男子が女子を上回っている。“不正入試”は東京医大だけなのか。

 編集部では、教育情報を扱う「大学通信」のデータをもとに、女子が男子に比べて医学部にどれだけ入りにくいのかを調べた。

 2018年度一般入試の全82医学部(医学科)では、59大学が男女の志願者数と合格者数を公表している。志願者数を合格者数で割った「合格倍率」を出し、さらに女子の合格倍率を男子のもので割った「男女の倍率比」を分析することで、女子が男子の何倍“狭き門”になっていたかが浮かび上がった。

 不正が発覚した東京医大では女子の合格倍率は男子よりも3.42倍も高い。2次試験の小論文で、女子や多数回の浪人生に不利な操作をしていた。

 59大学のうち男女の倍率比が3倍を超えたのは東京医大だけだが、数値が比較的高いところはほかにもある。2倍以上が東京医大のほか2校あり、1.3倍以上は約3割に及ぶ。

 他の学部ではどうなのか。比較のため、早慶上智など七つの有名私大を対象に、医学部と同じく男子受験生が多いとされる理工系学部について、過去5年間の男女の倍率比を調べた。大学通信によると最大で1.8倍となり、7割が0.8~1.3倍未満に集中。大学通信の安田賢治常務はこう指摘する。

「医学部入試では、男子優遇の構造的な問題があるのではないかと指摘されてきた。男女の合格倍率比がほかより高く、そうした状態が続いている大学は、男子優遇の疑念が強くなる」

 男女の倍率比が2.45倍と、東京医大に次いで大きかった聖マリアンナ医科大。前年度の0.88倍から急上昇した。取材に対し得点操作を否定し、こう回答した。

「入学試験の結果を正確に反映しただけです。今年度の全入学者の男女比は男性61%、女性39%で、女子学生を減らす意図は全くありません」

 聖マリアンナ医科大では、ほかにも不可解な数字がある。公表データによると、17年度と18年度の入試で2浪以上の女子(社会人らを含む)は入学者ゼロ。一方、2浪以上の男子は17年度は47人、18年度は37人。2浪以上の女子は16年度は23人、15年度は14人、14年度は16人いたのに、急にゼロになったのだ。大学側は公平・公正な試験の結果だと強調している。

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