一橋大学名誉教授の石弘光さん(81)は、末期すい臓がん患者である。しかも石さんのようなステージIVの末期がん患者は、5年生存率は1.4%と言われる。根治するのが難しいすい臓がんであっても、石さんは囲碁などの趣味を楽しみ仲間と旅行に出かけ、自らのがんを経済のように分析したりもする。「抗がん剤は何を投与しているのか」「毎日の食事や運動は」「家族への想いは」。がん生活にとって重要な要素は何かを連載でお届けする。
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いずれ抗がん剤は、効かなくなる。私は抗がん剤治療を始めてから、いつもこのことを念頭に置いてきた。
そしてがんを治癒する力はなく、単にある期間がん患者の延命を助けるだけだということも、十分に理解して治療を始めたわけである。
■延命効果が期待できるのは投与後半年後
ではどのくらいの期間、抗がん剤は効くのか。おそらくがんの種類や薬の性格によって、患者ごとに違うはずである。
専門医の見立てでは、進行がんの場合、延命効果が期待できるのは、セカンドラインぐらいまでだとされている。大体、3~4週ごとの抗がん剤を4~6サイクルくらい行うと、ファーストラインからセカンドラインに入るとされる。
通常、それは投薬を開始して半年後ぐらいだろう。それ以降セカンドラインが続く間、抗がん剤治療の有効な期間ということになろう。
なぜ、こんな現象が起きるのか。
いうまでもなく、薬剤耐性のためである。何も抗がん剤に限らずすべての薬剤に起こる話で、使用すればするほどその効き目は失われてくるからである。
■よくぞ効いてくれた! 抗がん剤への感謝の気持ち
私の場合、抗がん剤治療を開始してちょうど1年半後の2018年1月ぐらいから、毎月測定される腫瘍マーカーのCA19-9の上昇によって、耐性の存在が確認された。
この腫瘍マーカーの上限値は37であるが、1月に54.6となり2月にはさらに80.8まで上がってしまった。