SNSで「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれるノンフィクション作家・山田清機さんの『週刊朝日』連載、『大センセイの大魂嘆(だいこんたん)!』。今回のテーマは「謝る」。
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「本当の謝罪とは、相手に許してもらうことを期待せずに謝ることです」
ある人にこう教えられて、なるほどと思ったことがある。彼は何度か人を裏切る行為をして、その都度土下座をするような謝罪をして切り抜けてきた人だったから、言葉に重みがあるような気がしたのである。
でも、許しを期待しないで謝るなんて、なかなかできることじゃない。
大センセイと妻太郎は仲のいい夫婦であるから、喧嘩はあまりしないのだが、たまにはしなくもない。
「父ちゃんって神経質なくせに、タオルの端っこ揃えない人だよね」
「ああ、悪い悪い、気をつけるよ」
洗面所のタオル掛けに掛けてあるタオルで大センセイが手を拭くと、なぜかタオルの端っこがズレる。妻太郎は、それが気になって仕方ないらしいのである。