A君がふたたび机の中を探すと、ノートの間から懸案の提出物が出てきたのである。岡田先生の顔がパッと赤く染まった。

 クラス全員が、固唾をのんで事態の推移を見守っていた。

 すると、岡田先生は教壇を降りてA君の机の前まで歩いていき、両手をガバリと机についたのである。

「申し訳なかった」

 先生は頭を下げたまま、しばらく顔を上げなかった。

 不思議なことだが、このときのことを思い出すと、大センセイ、なぜか生きる勇気が湧いてくるのだった。

週刊朝日  2018年8月10日号

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