

「今の若手にはスターがいない、ということですよ」
プロ野球オールスターゲーム(7月13、14日)のファン投票で、セ・リーグの先発では中日の松坂大輔投手(38)、中継ぎには巨人の上原浩治投手(43)の両ベテランが選ばれ、球界関係者はそう思ったという。
「特に、リーグを代表する投手で今が選手として旬の菅野(智之)が人気の面で松坂に大差で負け、シーズン当初こそ活躍したものの、今はベンチから信頼されていなくて大差がついた試合での起用が目立つ上原が選ばれた巨人は象徴的です。“力量”と“人気”のギャップが大きい選手を抱えてるってことでね」(同前)
場内アナウンスが「ウエハラ」とコールしたときの歓声はすごいというが、成績が伴っておらず、そこに居心地の悪さを感じているのは本人で、今回のファン投票選出には「感謝してますが……複雑です」とコメントしていた。
「松坂と上原に加えて外野手2位で選ばれた青木(宣親)を含めた“洋行帰り”の3人が選出されて、日本人特有のセンチメンタリズムが感じられます」と言うのは、ベテランのプロ野球記者だ。
プロ野球があまり地上波で放送されなくなって久しく、今はパ・リーグTVやダ・ゾーンなど、有料チャンネルで見るコンテンツの一つとなっている。
「そんなマニアな市場に、かつてプロ野球が国民的娯楽だったころのビッグネームがタイムスリップしたように現れたら、そりゃ、こうなりますよ」というのは、やはりプロ野球を取材して長いベテランのスポーツ紙記者だ。
「しかも松坂は“平成の怪物”と呼ばれた男。そんな彼が平成最後の年にカムバックして勝ったのは象徴的だし、そもそも来年、元号が変わらなければ平成“最後”とは言えないわけで、ドラマを感じます。おまけに今年の夏の甲子園の高校野球は第100回という記念の大会で、いつにも増して甲子園のヒーローが騒がれてて、舞台がそろってるんですよ」(同前)
奇しくも松坂と上原はプロ入団が同じ年。彼らはルーキーイヤーだった1999年のオールスターに共にファン投票で選ばれ、セ・パの先発投手として対決した(松坂が負け投手)。19年という時を経て、おっさんになった2人だが、昔の名前に大いに期待したい。(黒田朔)
※週刊朝日 2018年7月13日号