無計画に投資を始めるのは禁物だが、慎重になりすぎて行動に移せないのも考えもの。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんは、投資における損失を、どれくらいまで許容できるのかを知ったうえで、自分に合った運用をおこなうことがシニアには不可欠だという。好評発売中の週刊朝日ムック「定年後のお金と住まい2018」から紹介する。
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リタイアしても、お金との付き合いは“生涯現役”だ。人生90年時代といわれ、定年退職後も残りの人生は20~30年続く。
老後資金の大敵であるインフレに備えるためにも、投資によって資産を増やしたいと考える人は多いだろう。しかし、不安と焦りで「すぐに運用しなければいけない」と思い込み、退職金で無計画に投資を始めるのは禁物だ。
大切な定年後の資金を減らさないためにも、退職金を手にしたら、まず定期預金に入れ、リタイア後の人生設計とお金の使い方を冷静に考えよう。そして、自分に合った投資・運用スタイルを知ることが重要だ。
投資で利益を得るためには、必ずリスクをとることになる。押さえておきたいのは、投資の世界でのリスクは「危険」「損をする」という意味ではなく、「結果が不確実であること」を指し、「価格変動の大きさ(ブレ)」を意味するということだ。
「リスクが小さく、リターン(収益)が大きい」という都合のよい金融商品は存在しない。大きなリターンを得ようとすれば、大きなリスクが伴う。
つまり、高い収益を上げる可能性のある金融商品(=価格変動リスクの高い商品)は、価格が大きく上がる可能性とともに大きく下がる可能性もある。
投資で失敗しないためには、まず、各金融商品のリスクやしくみと期待できるリターンの目安を知ることが大切だ。どれだけのリスクをとることができるかは、その人の性格や金融資産、住宅ローンの有無、教育費を必要とする子どもがいるかなどによって異なる。
たとえお金持ちでも1円も損をしたくない人もいれば、収入や資産が少なくても大きく儲けるために損失を覚悟で積極的にリスクをとってもかまわないと考える人もいる。
また、投資型商品への資産配分の上限の目安として、よくいわれるのが「100-年齢」だ。たとえば、60歳であれば最大で資産の40%までリスクをとってもいいことになる。ただし、投資はあくまでも余裕資金の範囲でおこなうもの。多額の住宅ローンなど大きな負債がある人、家計が厳しい人はそこまで大きくリスクをとってはいけない。
金融商品に投資し、自分がどれだけの損失まで耐えられるかを表す言葉が「リスク許容度」だ。投資というと収益や利回りばかりに目が向きがちだが、どれだけ損失を許容できるかを考える必要がある。投資をする前に、自分のリスク許容度を把握しておこう。