重松:そうですね。親会社が「阪神電鉄」から「阪急阪神ホールディングス」へ変わることが新規参入扱いになるとは、協約にあることを杓子定規に当てはめているだけのようにも見えます。村上ファンドやホリエモンと同じように、法律に触れなければ何をやってもいいという考え方と根っこは同じように思えますね。

星野:阪神がトロいということはあるのかもしれません。が、球団の70年の歴史をどう考えるのか。ジャイアンツとタイガースで競り合って、戦後間もない日本に希望を与えてきたのに。

重松:まさに、日本球界の屋台骨を背負ってきたチームですからね。

星野:そうなんです。それをただルールだけで結論を出していいのか。まあ、僕は阪神側の人間だからね。でも、僕はやっぱりそういう考え方はしないタイプだな。

重松:我々が星野さんに惹かれるのは、義理があって、情もある。でも引くところでは引き、押すときは押す。物事を杓子定規にとらえない、あるいは数字で置き換えられないものがあるとみせてくれるからなんです。でも、今は数字に置き換えられないものはないような雰囲気になってしまっていますね。

星野:そういう教育をしているんでしょう。今の日本の教育は、精神的にも肉体的にも鍛える、我慢させるという時期がほとんどありませんよね。それで、社会人になって初めて「悔しさを我慢しろ」といっても、そら無理ですわ。それで、やけっぱちになる。本当は、その気持ちといかに戦うかが大事なんですよ。僕は子どものころ、甲子園に出たいという気持ちがあって、野球を始めました。でも結局、高校時代は甲子園の土を踏めませんでした。そのことが、今でも悔しくてね。だから高校野球のOBが甲子園目指して集まる「マスターズ甲子園(※)」にも、「俺のことじゃないか」って賛同したんです。けれど僕は、甲子園に出られなかった悔しさをエネルギーにして、これまで頑張ってきたという自負もあります。

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