再編・淘汰(とうた)が進めば、“消える”銀行も出てきそうだ。経費削減のために、地元の支店が閉鎖されるところもあるだろう。利用してきた預金者や、借り手の中小企業も影響が避けられない。
国と地方の借金が1千兆円を超えるなか、財政の健全化も喫緊の課題だ。
安倍首相は選挙に臨むにあたって、19年10月に8%から10%に引き上げる消費税の使い道を変えると表明した。5兆円超の増収分の借金返済分を減らし、教育無償化などにまわす。
これまで「2020年度」としてきた財政再建目標の達成時期は、先送りされる。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化すると世界的に公約してきたが、破ることになる。
借金の返済よりも教育無償化などにお金をまわすのは、有権者の理解を得やすい。選挙で勝つための「ばらまき」は、これまでも多くの政権で繰り返されてきた。
慶応大学の土居丈朗教授はこう話す。
「政府には景気が良ければ税収も増えるから財政健全化にそれほど血まなこにならなくてもいい、といった態度が見え隠れします。しかし、将来の成長見通しは甘くなりがちで、税収も見込みほど増えない。そろそろ甘い見通しを前提に財政健全化に取り組む姿勢を改めるべきです」
25年には団塊の世代の全員が75歳を迎える。国の推計では25年度には医療費だけで50兆円に達し、12年度の5割増に膨らむ見通しだ。医療・介護など社会保障制度の改革も急がないといけない。こうした改革や財政の健全化を先送りすればするほど、問題は解決しにくくなり、最後は国民に大きな影響が及ぶ。
経済政策には功罪両面が必ずあり、「100点満点」はない。安倍首相がこのままアベノミクスの成果を誇り、「罪」の部分を率直に認めなければ、ひずみはたまり続ける。そのツケを支払わされるのは国民一人ひとりだ。(池田正史)
※週刊朝日 2017年11月3日号より抜粋