日銀が国債を買えば物価が上昇し、デフレから脱却できるはずだったが、今はそうなっていない。京都大学名誉教授の伊東光晴氏は、異次元の金融緩和そのものが間違いだったという。
「そもそも、国債買い上げと物価上昇に因果関係はありません。異次元緩和策そのものが間違いだったのです。でも、国債の購入をストップすれば金利が上昇するので、今さら後戻りはできない。いくら国債を発行しても日銀が引き受けてくれると政府は考えるから、財政規律も緩みます。まさに泥沼の状況です」
18年に任期満了を迎える日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の後継をどうするのかを含め、緩和策の「出口」について早急な議論が必要だ。
追い詰められているのは日銀だけではない。金融機関、とりわけ地方銀行の経営環境は苦しくなっている。
日銀は16年2月に、お金を預ける側がお金を支払う「マイナス金利政策」を導入した。銀行は預金の金利と、企業に貸し出す際の金利との「利ざや」で、もうけている。その利ざやがマイナス金利政策によって、小さくなっている。メガバンクより経営体力がなく、融資先が地元の中小企業などに限られる地銀にとって厳しい状況だ。
金融機関への経営コンサルティングなどを手がけるマリブジャパンの高橋克英社長は、
「地銀は人口減、地域経済の衰退など、大きな環境変化に直面しています。個人向けの資産運用ビジネスなど、新しいビジネスモデルにかじを切り、リストラなどによって効率化を図らないといけない。マイナス金利がこうした動きを後押しするでしょう」
と話す。
地銀は今なお全国に105行あり、過当競争だと指摘されている。高橋氏は、国内の地銀は20年前後までに20グループに集約されると予想する。
「マイナス金利は企業の資金需要を喚起し、金融機関の貸し出しを伸ばすことが狙いの一つでした。しかし、貸し出しは思うように伸びず、狙い通りの効果は上がっていません。その意味でマイナス金利政策は失敗ですが、地銀の体制転換を促し、再編・淘汰を早める効果はありそうです」(高橋氏)