林:さりげなくカバーし合う、温かい感じがいいですよ。お母さんたちも見ているんですよね。
横山:カメラの後ろで。
林:「○○ちゃんガンバって!」と手を握り締めて見てるんですね。
横山:泣いて最初から参加できない子のお母さんは、アセってきて「○○ちゃん、出なさい!」って(笑)。そうなると子どもはお母さんからますます離れなくなっちゃうので、カメラが回ってないところで僕らがお子さんの興味を引いて、参加したいという気持ちになるようにいろいろ工夫するんです。でも、中にはとうとう出られなかった子もいます。そういう子は、少しでも思い出を持って帰ってもらえるように最後にちょっとお話をしますね。
林:9年間のうちで、忘れられないお子さんっていました?
横山:病気を持ってる子もいっぱいいました。病院にコンサートに行って、ICU(集中治療室)の子どもたちに童謡をアカペラで歌ったこともあります。
林:子どもたち、うれしかったでしょうね。
横山:ICUに白血病の子がいて、透明のカーテン越しにお母さんとメッセージのやりとりをしました。「この子は『おかあさんといっしょ』が大好きで、いつも励まされています」「『ぼよよん行進曲』が好きです」と書いてくれたので、みんなで「ぼよよん行進曲」を歌いました。カーテン越しでしたが、そのときの笑顔は忘れられないですね。
林:そうですか……。
横山:9年の間には東日本大震災もあって、被災地で歌ったこともありました。自分の歌の原点は、子どもたちに豊かな人生を送ってもらいたいということ。「おかあさんといっしょ」はNHKの一番組かもしれませんけど、子どもたちが人格形成をしていく大事な時期に温かい歌を届けられる。何十年かしたときに、音楽や芸術を愛してくれる人が一人でも多く育ってくれたらうれしいな、という思いでやっていました。
林:素晴らしいです。週に何日ぐらい収録するんですか。
横山:収録は週3回です。
林:週に3回NHKに行っているんですか。
横山:いや、だいたい週6日です。月火水は収録、木曜日がリハーサル、金曜日は録音、土曜日に外のスタジオで録音したり、地方のコンサートに行ったりとか。
林:今はもうNHKに週に何度も通うことはないわけですね。
横山:ほとんど行くことがなくなっちゃって寂しいです。子どもたちは「だいすけロス」と言ってくれるかもしれませんが、僕にとっては「子どもロス」ですね。
林:この9年間、自重していた部分もあるんでしょう? お酒飲んで泥酔しちゃいけないとか、変な写真撮られないようにとか(笑)。