今春にNHK「おかあさんといっしょ」の「うたのお兄さん」を卒業された、「だいすけお兄さん」こと横山だいすけさん。現在は歌手や俳優として、活動の幅を広げていらっしゃる横山さんですが、その知られざる素顔に作家の林真理子さんが対談で迫ります。
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林:なぜNHKがだいすけさんをうたのお兄さんに選んだかわかりますよ。温かい家庭に育った気持ちのやさしさが、体全体からにじみ出ていますもん。子どもたちとは最初からうまくいきました?
横山:いや、なかなか難しかったです。僕は子どもが好きですけど、子どもの緊張をほぐしてあげるノウハウがあるわけではなかったので、手探りでした。うまくいくときもあれば、失敗することも多かったです。
林:でも、歌はバッチリ。
横山:歌も2年間ぐらいはなかなかうまく歌えませんでした。「おかあさんといっしょ」の歌は、お母さんと子どもが一緒に歌えるようなキーでつくられているものが多いので、僕にはちょっと低いキーの曲が多かったんです。実は僕、小学校3年生から地元の合唱団、高校からはセミプロの合唱団に所属して、合唱をけっこう長くやっていたんです。その合唱グセがぜんぜん取れなくて大変でした。
林:「合唱グセ」があるんですか。
横山:周りの人と声を合わせることに慣れすぎちゃって、表現がワンパターンになるんです。「もうちょっと個性を出して」と指導されました。個性は合唱にとってはタブーなので、最初はうまくいかなくて。
林:泣いてうずくまってる子とか、はぐれる子もいますよね。
横山:います、います。でも、「おかあさんといっしょ」は、見てくれる親子が楽しめる番組として、ありのままの姿を届けられるようにも意識していました。泣くことも、騒ぐこともダメなことじゃない。そうなったときに、僕たちが空気を感じ取りながら、みんなで一緒に楽しめることを大切にしていました。
林:生意気な子もいます?
横山:いっぱいいます。「みんな元気?」って聞くと、「元気じゃない」「帰りたい」って言う子もいますし、ずっと鼻をほじくってる子もいますしね(笑)。「お兄さん、大きいの取れたよ。ほれ!」「おっ、すごいねえ。しまっておくね」みたいな(笑)。
林:やだァ~、そんなことまでしてあげるんだ。身体障害のあるお子さんもたまに来ていますよね。
横山:はい。いろんなケースがあります。僕らが歌ってるときには体操のお兄さんが抱っこしてくれて、体操のお兄さんが体操を頑張るときは、僕らがフォローしてあげる。みんなにちょっとでも楽しい思い出を持って帰ってほしいんです。