――華やかな披露宴の後、再び米国に戻り、ロサンゼルスで新婚生活が始まった。

妻:私たちの両親同士はとても仲がよかったんです。これは結婚では大切なことだと思います。彼は結婚前と変わらずやさしくて。何でも「はい」と言って素直な人だなと思っていましたが、今思えば、日本人はみんなそうなんですね。そこはちょっと間違えてました(笑)。

夫:アメリカ人はみんな誤解するのよ。聞きながらウンウンとうなずいているだけで、同意しているわけじゃない。ダイアンは日本人の顔をしているけど、内面はアメリカ人だから、最初のうちは文化の違いに首をかしげたり、迷ったりすることがよくありました。でも、僕らは結婚60年でケンカは1回だけ。

妻:60年じゃなくて53年。

夫:結婚して2、3日目に言い争いをして、ダイアンが家から出ていこうとした。僕が「このドアを出ていったら二度と帰ってくるな」と言ったら、くるっと、きびすを返して戻ってきました。それきり、ケンカはしたことがありません。

妻:確かにケンカした記憶はありませんね。

夫:あのときの原因はお米じゃないかな。ダイアンが夕食を作ろうとして僕の留守中にお米を炊いた。うまくいかずに何度も炊いて、失敗したのを排水口のディスポーザーに捨てたんだけど、その量があまりにも多かったから、粉砕されたコメがアパートの他の家の排水口から出てきちゃって大騒ぎになった。それで僕が怒ったんじゃない?

妻:お米を炊いたのは覚えているけど……。実家では両親がすべてやってくれたので、料理も洗濯もしたことがなかったんです。両親は戦争中に苦労したので、私を大切に育てました。不幸な場面を見せたくないと、お葬式にも連れていかなかったくらいです。

夫:お義父さんは強制収容所で料理をしていたんだよね。

妻:そう、だから結婚前、あなたが家に遊びに来ると父の料理を出していました。私のお手製だと思っていたでしょう? 結婚後、父に料理を教えてもらいました。

「長年女性に囲まれた男が言い切る『また結婚したい』奥さんとは?」につづく

週刊朝日 2017年9月15日号 より抜粋

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