春夏連覇を達成した両投手は、いずれも2年生の夏に手痛い敗戦を経験している。松坂は神奈川大会の準決勝でサヨナラ暴投し、藤浪は大阪大会の決勝で先発しながらも5失点で降板し、チームはサヨナラ負けを喫した。
今年の大阪桐蔭の中心となったのは、“ミレニアム世代”と呼ばれる2年生だった。前出の中川や柿木に加え、高校日本代表に選ばれている外野手の藤原恭大や、投手と内外野をそつなくこなす根尾昂がいる。いわば大阪桐蔭史上、「最強世代」である彼らにとっては、この夏の敗戦が教訓となり、今後の糧となるのではないだろうか。
西谷監督は言う。
「最強世代とはみじんも思っておりませんが、(松坂や藤浪に)続きたいという気持ちはあります」
敗戦の翌日。早朝にホテルをチェックアウトしたナインは、午前中のうちに寮の掃除を終わらせ、早くも新チームを始動させた。
守備が乱れた前日の悔しさを心と体に刻むように、ウォーミングアップ後の最初のメニューはシートノックだった。その練習を、ケガでジャージー姿だった中川がジッと見つめていた。
新たな主将は満場一致で決まった。選ばれたのは中川だった。
※週刊朝日 2017年9月8日号