【ポイント】


フライパンを熱したら卵を入れ、火を消したあとは余熱だけで焼くことで鮮やかな黄色に

・卵潮煎(たまごうしおに)
半熟卵を昆布だしと煎酒(いりざけ)の香りで包んだお吸い物。だしに溶け出す半熟卵の黄色も鮮やかな逸品。お酒の締めにも最適で、卵を固ゆでにすると別の味わいに。

【原文】
1 昆布の溏油を こしらへ 焼塩にて 加減し
2 外の鍋へ 湯を煎し
3 たまごを一ツ宛 わりこみ 湯がきて
4 丼に温酒を入レ 此中へ 右のたまごを 一寸漬て あみ杓子にて とり上ケ 器に入レ
5 右の溏油汁を入レて 出すべし

【レシピ】
1 昆布だしを作る。塩を足して味を調える。
2 ポーチドエッグを作る。別の鍋に湯を沸かし(500ml)、酢、塩を加える。箸で湯をクルクルとかき混ぜて渦を作る。
3 渦の中心にそっと卵を1個割り入れ、箸で広がっている白身をそっと集めながら2分半待つ。
4 網杓子などで冷水に取る。
5 日本酒を温めて器に入れて、そっと卵を入れて卵を保温しながら酒の風味を付ける。
6 お椀に日本酒につけておいた卵をそっと入れて、1で準備した温かいだし汁を注ぎ入れる。

ポイント
火加減は中火で。味付けの日本酒は料理酒ではなく、純米の香りのよいものを使うこと

■江戸を食す

 社会が安定した徳川時代に日本独自の食文化が開花し、現在の和食の基礎が確立された。特に江戸後期には屋台や料理店が増え、江戸の粋や洒落(しゃれ)を表現した店が江戸っ子の人気を集めた。

 さらには百珍物というレシピ集も出版され、庶民の間にも料理が普及した。そんな料理が味わえるのが嘉永3(1850)年創業の割烹嶋村だ。

「幕末会席は代々伝わる料理を会席にしていますが、基本は創業時のままです」とは8代目主人の加藤一男さん。

 嶋村のような料亭の江戸料理を楽しむのもよし、ウェブに公開されている「江戸料理レシピデータセット」をもとに当時の料理を再現するもよし。

 江戸料理は素材を生かしシンプル。体にも心にもやさしい料理なのだ。

週刊朝日 2017年7月7日号

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