2016年、17年と中学受験する人が2年連続で増えている。1都3県(東京、千葉、神奈川、埼玉)では13%、公立小卒業生の8人に1人が受験している計算だ。
費用もかさむ中学受験。それに見合うだけのメリットはあるのだろうか。
文科省の調査によると、幼稚園から高校卒業までの15年間の学習費総額は、すべて公立だと計約523万円。小学校のみ公立で幼稚園、中高が私立だと計約1041万円、幼稚園からすべて私立だと計約1770万円。最大で3.4倍の開きがある。
早大と慶大の付属中合格をめざす進学塾「早慶道場」の鎌田将豪代表は、就職までの費用をトータルで考える必要性を訴える。私立が高くて公立が安く済むとは限らないという。
「大学受験で1年間浪人すると、予備校費用が年100万円ほどかかる。就職が1年遅れ、さらに300万円ほどロスする。現役合格しやすい私立に入れば、結局お得な場合があります」
確かに進学実績の高い難関私立中に入れれば、コストパフォーマンスがよいかもしれない。
ただ、中下位の私立校ならばどうか。森上教育研究所の森上展安氏はこう話す。
「中下位校でも私立は教育熱心な家庭の子が集まり、学習習慣が身につきやすい。目に見えない学校の文化が子どもによい影響を与えることもある。中学入試の偏差値が40台でも、東大合格者を出す学校はいくつもあります。少人数での丁寧な教育が実を結ぶことは多い」
中学受験は、親と子が二人三脚で取り組む試練。親子の絆を育む利点もあると、鎌田氏は話す。
「親主導の小学校受験、親の出番がほぼない高校受験と違い、中学受験は親子で目標を成し遂げられる。チャンスをくれた親への感謝の気持ちが育まれ、人格形成によい影響を与えます」
ただ、すべての子が第1志望に受かるわけではない。受験に失敗した挫折は、悪影響を及ぼさないのか。
森上氏は「親が丁寧にフォローしないと、挫折感が残る可能性は確かにあります。一方で、悔しさをバネにする子もいる。生徒のその後を見守る塾の先生方から、中学受験に失敗した子の東大合格の話を毎年のように聞きます」と話す。