特にインフルエンザシーズンは、肺炎を引き起こすリスクが高まるという。(※イメージ)
特にインフルエンザシーズンは、肺炎を引き起こすリスクが高まるという。(※イメージ)
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 俳優の根津甚八さん、放送作家の永六輔さん、女優の原節子さんや森光子さん、元衆議院議長の土井たか子さん……。多くの著名人の命を奪った「肺炎」。2011年以降、悪性新生物(がん)、心疾患に次いで、日本人の死因の第3位となっている。特にインフルエンザシーズンは、肺炎を引き起こすリスクが高まるという。

「肺炎にかかる人は65歳からぐんと増え、肺炎で亡くなる患者さんのうち、65歳以上が占める割合は、なんと97%にものぼります。肺炎自体には季節性はありませんが、インフルエンザや風邪にかかった後に肺炎になることがたいへん多いので、これからの季節はとくに注意が必要です」

 こう話すのは、和光駅前クリニック(埼玉県)の呼吸器の病気を専門とする寺本信嗣(しんじ)医師だ。

 肺炎と一口にいっても、原因となる菌にはたくさんの種類がある。そのなかで最も割合が高く、成人の市中肺炎(院外で生じた肺炎)全体の20~28%を占めるのが「肺炎球菌」だ。インフルエンザシーズンになると、その割合は5割以上にものぼる。

 肺炎球菌は、丸い形の菌が二つ連なっていて、その周りは莢膜(きょうまく)に覆われている。現在発見されているだけで93種類の血清型があり、そのうち約30種類に病原性があり、肺炎を引き起こすという。

 インフルエンザや風邪にかかった後に肺炎球菌による肺炎になるのは、熱などの症状で体力が落ちているといった理由だけではない。肺炎球菌に詳しい東北大学大学院医学系研究科の川上和義氏は、感染のしくみについてこう説明する。

「風邪のライノウイルスやインフルエンザウイルスなどに感染すると、IL‐1やTNF‐αといった炎症をもたらす物質(炎症性サイトカイン)が体内で作られます。それにより、気道やのどの細胞の表面に肺炎球菌と結合する受容体が増えるため、肺炎球菌に感染しやすくなるのです」

 前出の寺本医師によると、気道や咽頭にある細菌などの異物を追い出す繊毛(せんもう)の掃除システムも、ウイルス感染が起こると弱まるため、細菌が排除されにくい状態になるそうだ。

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