海の見える家での暮らしやごはんを、イラストとエッセーで紹介する妻・こぐれひでこさん。雑誌やコマーシャルの写真家として活躍する夫・小暮徹さん。出会いから51年経ったいまも「徹くん」「ひでこさん」と呼び合う仲の良さだ。出会いから結婚、パリでの生活を振り返る。
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妻:出会いは大学の入学手続きのとき。私は「小柴」でこの人が「小暮」。だから「小暮徹」の次に自分の名前を書いた。それが最初。
夫:ひでこさんはちっちゃくって、かわいらしい人でしたよ。明るくて、ハッキリしてて、よく笑うしね。
妻:1年生のとき、女3人男2人で奥日光に写生旅行に行ったよね。それが付き合うきっかけかなあ。あと新潟のほうにも鈍行列車で行ったね。
夫:直江津の駅で電車がなくなっちゃって。
妻:そうそう、駅の中で寝たね。特別に劇的な出来事はなかったけど、そうやってだんだん仲良くなったのかな。音楽好きっていうのも共通項だったね。
夫:いまもテレビで「懐かしの歌謡曲」なんて特番をやっていると、二人で2時間ずっと歌ってます。
――1969年に大学を卒業した二人は、その5月に結婚。交際期間3年とはいえ、なかなかのスピード婚だ。
妻:素早かったね。私がそのころ引っ越しをして。
夫:そこに僕がボストンバッグ1個で転がり込んだんです。「じゃ、結婚しますか」となった。
妻:親が「あらあらあら」って言うくらい、あっという間。
夫:当時、僕は大学院に行きながら、高校の美術講師をしていました。お金が足りないから、郵便配達のアルバイトもしていた。
妻:私は通信教育の学校で美術の講師をしながら、趣味で洋裁の学校に行ったんです。学校はすぐ辞めちゃったけど、それから自分で服のデザインをするようになった。
夫:西武デパートに1週間だけ店を出したりしてたよね。僕はそのころ、まだ写真は全然やってない。ただ、ひでこさんの友達のつながりで、音楽誌やミニコミ誌のデザインをしてて、暗室はあったんだ。アパートのお風呂を改造してね。
妻:だから部屋にお風呂なかったんだよね。
夫:そう、ひでこさんはよく流しでお風呂に入ってた。