亀山:毎日たくさん、相談のメールが届くんですけど、なかには「私はこんなにいけないことをしています」「妻(夫)に非はないのに、自分はひどい人間です」といった懺悔(ざんげ)もけっこうあります。ま、ノロケですよね。
──亀山さんの最新刊『人はなぜ不倫をするのか』では、ジェンダー研究の上野千鶴子さん、脳科学の池谷裕二さんのほか、心理学、性科学、動物行動学、宗教学、昆虫学、行動遺伝学の専門家計8人に「人が不倫をする理由」を尋ねています。なぜ、こういうアプローチを試みたんですか。
亀山:「そもそも」って突然思ったんですよね。人は当然不倫をするものと考えてきたけど、ベッキー騒動のときに、ふと「あれ? どうしてするのかな」と。「そもそも」を解き明かしたかったから、動物や遺伝のほうに向かったんです。根っからの文系だから頭から湯気が出そうでしたけど、すごくおもしろかったです。
──私も読んでいて、目からうろこがたくさん落ちました。学者のみなさんに話を聞いて、不倫に対するイメージは変わりましたか。
亀山:みなさんの個人的な意見はさておき、不倫を「ありえない行動」と否定した人はひとりもいませんでした。動物としてはそれが自然で、むしろ結婚制度に無理があるのかもしれない。不倫はいけない、一生ひとりの人しか愛しちゃいけないっていう決まりを守らせようなんて不自然ですよ。
──人間も動物の一種と考えると、そうかもしれませんね。アメリカだと、ほかに好きな人ができたらすぐ離婚、みたいな傾向もあるようですが。
亀山:アメリカ人みたいに本音だけで行動するのは、日本人には向いていないんでしょうね。日本人の結婚観もヘンだと思う。とりあえず家族という形をキープしようとする。キープしつつ、生々しいことはよそでしたい。本音と建前を使い分けている。車の両輪というか、両方ないとダメという人は、増えていくんじゃないでしょうか。
※週刊朝日 2016年10月7日号より抜粋