代表選手に限っては、ひとまずリオ五輪まで職を手にすることができた。しかし、五輪出場という快挙を成し遂げた選手たちの多くは、職を失うという将来への不安を抱えている。

 水球は“水中の格闘技”と呼ばれるほど、激しい競技として知られる。ルール上、シュート態勢に入っていなければ相手に接触することは可能。手首や足、水着など掴めるところを掴んで、相手の自由を奪うさまはどこかレスリングをも連想させる。ただ、水中は死角になることが多く、ヒートアップすれば殴る、蹴るなどの打撃はもちろん、海外選手は金的攻撃も辞さない。まさに水面下での争いは想像以上に熾烈(しれつ)だ。

 しかも、国内水泳陣ではマッチョとはいえ、世界的に見れば小柄な日本人選手たち。海外の選手は2メートル近い大男ぞろいで、リオ五輪出場チームのなかでも日本の平均身長は断トツに低く、そのハンディは決して小さくない。
 
とりわけドライバーの荒井陸(あつし、22・全日体大)は身長165センチ、体重63キロと小柄だ。

「水球をやっていて自分より小さな選手は見たことがない。おそらくリオ五輪に出場する選手のなかでも、僕がいちばん小さいと思います。ただ、だからこそトップ選手をギャフンと言わせたいんです」(荒井)

 体格とパワーで不利な日本は、スピードと持久力を武器に世界に挑む。その発想は、昨年のW杯イングランド大会の初戦で強豪南アフリカを破って躍進したラグビー日本代表に近い。

 ハードなトレーニングもラグビーさながら。この1年で200日近い合宿や遠征が組まれた。合宿中は午前中だけで1万メートルを泳ぐなどして、泳力やスピードを徹底強化してきた。午後の戦術練習も加えれば、1日6時間から8時間はスイムトレーニングに費やすなど、練習量には絶対の自信を持っている。

週刊朝日 2016年8月5日号より抜粋

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