改憲勢力が参院でも3分の2を超え、早くも政治日程に、安倍晋三首相の悲願である「憲法改正」がのぼり始めた。
改憲に前向きなおおさか維新の会とあわせて77議席を獲得したことで、テレビ局の中継インタビューでは、「自民党としては憲法改正は立党以来の悲願で、政権公約に書き込んである」と、悲願である改憲に早くも意欲を見せた。
6月19日に開かれた動画配信サイト「ニコニコ動画」の党首討論会では、首相は「次の国会から憲法審査会をぜひ動かしていきたい」とも語っている。秋の臨時国会から改憲の動きが出るのはほぼ確実な情勢だ。
国会対策に詳しい自民党関係者は言う。
「首相は、衆院の任期満了(2018年12月)までに国民投票をやりたい。となると、その前に憲法審査会で改正案をまとめ、衆参両院の3分の2以上の賛成で憲法改正案を発議し、60~180日間の周知期間を経て国民投票にかけることになる。これはかなり厳しい日程で、次の国会から準備をしないと間に合わない」
「衆院の任期中」を重視しているのは、二つの理由がある。まず、安倍首相は18年9月に党総裁の任期が切れる。党則を変更すれば延期できるが、大幅延長は難しい。もう一つは、今後の国政選挙だ。次の衆院選でも野党共闘が実現すれば、3分の2以上の議席の獲得は容易ではない。19年の参院選はさらにハードルが高く、今回より8議席増の85議席の獲得が必要となる。
となると、安倍首相に残された時間は約2年。限られた時間のなかで、憲法のどの条文を変えるのか。それが次の政治課題だ。
駆け引きはすでに始まっている。自民党幹部は言う。
「国会で改憲発議ができても国民投票で否決されれば、首相の責任問題になりかねない。それを考えると、国論を二分する論点はふさわしくない。まず、憲法9条の改正は難しい」
たしかに、自民党の高村正彦副総裁もテレビ番組で「将来は知らないが」と前提条件を付けながらも、9条改正についての可能性は「ゼロだ」と否定的だ。