澄んだ醤油ベースのスープに中太の麺。しゃきっと炒めたモヤシと豚肉を、あんでまとめ、トロリとかけた三層構造。モヤシソバ専用に、形がまっすぐな「分福もやし」を使用。800円(税込み)(撮影/大嶋千尋)
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一寸亭
東京都台東区谷中3―11―7 
営業時間 11:30~21:00L.O.
定休日 火曜(撮影/大嶋千尋)

 著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、落語家の林家正蔵さんが選んだのは「一寸亭のモヤシソバ」だ。

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 おかげさまでいろんな物を食べてきました。だからって、高級店は好きじゃない。押しつけがましい店も苦手。さて「人生の晩餐」って何だろうといろいろ考えたら、一軒しか残らなかった。それがここなんです。

 元からモヤシソバが大好きでして。ああ、そんな芸人でありたいな、と。飽きない、ざっかけない(ざっくばらん)、気取らない、押しつけない。それでつい、また食べたくなるような。

 世間には、茹(う)でただけのモヤシがドカッとのってたり、ニンジンやニラが贅沢に入る店もあるけれど、できればしゃきっと炒めたモヤシだけがいい。入っても豚肉。許されてキクラゲ。その点、ここのは理想的です。

 子供の頃から、モヤシはよく食卓に上りました。八百屋のバケツいっぱいに水が張ってあって、モヤシが浮かんでる。それが何とも気持ち良さそうで。あの歯触りが東京っ子の気性に合ってたのか、家族みんな好きでした。そう考えたら、モヤシソバは私の原点。やっぱりこれが、私の「人生の晩餐」なんです。

住所:東京都台東区谷中3-11-7/営業時間:11:30~21:00(L.O.)/定休日:火

週刊朝日  2016年6月24日号

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