「ダブル選に突入するには補選での圧勝と、サミットに入る5月末時点での景気上昇という二つが前提条件だった。ところが選挙は辛勝。春闘で経済界に要請していた賃上げも小幅にとどまり、消費拡大のめども立たない。ダブルの目はほぼ消えかかっている」
ただし、今回の補選が示したように、災害時には政権の復興対策が注目され、選挙では与党が有利となる傾向がある。与党にとっては「追い風」とも言えるが、「選挙をやっている場合か」と世論の反発を買うリスクもある。夏までに熊本地震からの復興がどれくらい進んでいるか。それが安倍首相の解散判断にも影響しそうだ。
今回ダブル選が行われなかった場合、衆院解散のタイミングはかなり先になると、浅川氏は言う。
「来年4月には消費税の10%への増税が控えている。景気の悪化を考えると、増税の前後半年ほどの間は選挙をするのは難しい。そうすると、解散のタイミングは最速でも2017年の暮れになると考えられる」
つまり、今夏を逃すと衆院選は1年以上先延ばしとなるというのだ。
一方、前出の角谷氏は「安倍首相がダブル選に踏み込む可能性は6割」と見ている。
「解散するときは『しない』と言い、しないときは『する』と言うのが政治の世界。『解散断念』報道をうのみにはできない。アベノミクスの失敗が明らかになりつつある中、解散が遅れれば遅れるほど政権への評価は厳しくなる。ここで『アベノミクスは一定の成果があった。ここからは次の次元を目指す』と宣言して解散し、大胆な社会保障政策など新機軸を打ち出せば、いままでの失敗を『リセット』できる」(角谷氏)
いわば、大義なき、“リセット解散”。野党はアベノミクスの失敗を責め続けるだろうが、国民の関心はすでに景気より社会保障など具体的な生活不安へと移っている。先んじてド派手な対策を打ち出したほうが評価される──というわけだ。
※週刊朝日 2016年5月20日号より抜粋