
余震が続く熊本、阿蘇大地震。現場にいたジャーナリストの桐島瞬氏がその時の街の様子を明かす。
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熊本県八代市のホテルの部屋で取材の準備をしている時、机がグラリと揺れた。わずかな横揺れの直後、激しく体を揺さぶられるような上下動が20秒ほど続いた。一瞬、「壁が割れる」と思い、部屋の中央に移動した。その瞬間、机の上の鏡台が倒れ、電気が消えた。4月16日午前1時25分、阪神大震災と並ぶマグニチュード7.3の巨大直下型地震が起きた瞬間だった。
外に出て取材しようと、国道3号を北上した。深夜にもかかわらず道は大渋滞。コンビニやスーパーなど、広い駐車場はどこも車でいっぱいだった。
近くの、墓石が倒れた墓地の写真を撮ろうと暗い路地に入ると、荷室のドアを開けた軽バンに2人のおばあちゃんと若い女性が毛布にくるまっていた。3人はすぐ横の家の住民だった。
「家の中がもうぐちゃぐちゃでいられないから、車に避難してきた」
午前3時半過ぎ。走っていると焦げくさい。周囲を見渡すとほかの人たちも原因を探しているようだ。警戒中のパトカーが伝えた。
「コーポからの火災」
どうやら少し離れた場所にあるアパートのようだ。カメラを抱えて駆けつけると、2階建てアパートの2階部分から激しい火柱が上がり、消防隊が消火活動を続けていた。
次にくまもと森都総合病院の玄関前に、白い毛布を羽織った大勢のお年寄りたちが見えた。
70代と思われる2人の女性に話しかけてみた。
「大きな揺れで病室から避難せざるを得なくなりました。一昨日の揺れは廊下に出ただけだったけど……。怖くて眠れない」