
グッチ、ディオール……ハイブランドのショップが並ぶ表参道に、赤い柱がよく目立つ、神社かお寺のような構えの一軒の店がある。
「オリエンタルバザー」。和雑貨や家具、着物や工芸品など、店内じゅうに「NIPPON」があふれかえっている。外国人に人気の日本土産店である。
東京・日本橋で創業したのは大正5年。表参道には昭和26年に移転した。当時の原宿は、米軍将校の居住施設「ワシントンハイツ」(現代々木公園)の住人が多く歩く街だった。オリエンタルバザー2代目の社長、笹川喜平さん(72)が言う。
「かつてワシントンハイツに住んでいたというお客さんが来られて、原宿はずいぶん変わったけど、ここは変わらなくて安心したと言われたこともあります」
表参道への出店に合わせ、店構えを独特の東洋的なイメージにした。
「外国のお客さんが、タクシーなんかで“ハラジュクのテンプルスタイル”と言ったらすぐわかるようにという意味もありました」
ジョン・レノンやジョン・ウェインらが来店したことも当時話題になった。現在はお客の約8割が欧米人、一番人気はシルクや綿製の、カジュアルに着られるタイプの着物だという。