グローバル化や少子化の波を受け、変革の真っ只中にある東京大学と京都大学。昨年4月に総長に就任した五神真東大総長と、ゴリラ研究の第一人者として知られる山極寿一京大総長が、未来の大学像を語った。
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――グローバル化が叫ばれるなかで、日本の大学には何が求められていますか。
山極:京大はMOOC(※)に参入して、私自身も先日、講義をしました。京大発の霊長類学というのはこういう学問で、人類の起源や進化に対しこういう仮説があるということを、世界各地の人々に聴いてもらったんです。東大や京大など日本の大学に独自の学問があることを知ってもらい、自分の国で役立ててもらうこと。これが本当のグローバル化だと思います。
五神:日本の学問には欧米とは違った多様性があり、それを日本に閉じることなく発信していく責任があると思います。学問を軸に国際社会を考え、政治的にも経済的にも安定した秩序を作るモデルを提案することも、日本の大学の役割。ハーバードの先生がこう言っているからまねしてみよう、ということではまずいわけです。
山極:先日ドナルド・キーンさんをお呼びして講演してもらいました。キーンさんは1953年から1年半、京都大学文学部にいました。そこで谷崎潤一郎や川端康成らに出会って、今の日本の文化や考え方が源氏物語からつながることに気づいた。それが日本の再発見につながり、川端康成のノーベル文学賞につながり、さらに今の日本の自信や文化の繁栄につながっているのかもしれません。