羽生の今季の初戦は、拠点であるカナダで10月中旬に行われるオータムクラシック国際になるという (c)朝日新聞社 @@写禁
羽生の今季の初戦は、拠点であるカナダで10月中旬に行われるオータムクラシック国際になるという (c)朝日新聞社 @@写禁
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「去年発売された、コーチのブライアン・オーサー氏の著書の中で、羽生本人が『この4年に集中して、そして終わらせると思います』と、平昌(ピョンチャン)五輪を集大成にしようとしていると思わせる言葉を口にしていたので、やはり、そうなのか、と……」(ベテラン五輪担当記者)

 ソチ五輪のフィギュアスケート男子金メダリスト・羽生結弦(20)が6日、拠点としているカナダ・トロントで練習を公開し、そこで「ソチ、平昌で(金メダルを)取って終わり。小さい頃から決めていた。そこからプロスケーターをやろうと思っていた。プロの仕事を全うできる体力の状態で、プロとしてやりたい」と公言したのだ。

 3年後の平昌での羽生は23歳。まだまだできるのに、と考えてしまうが、思い出されるのが彼の被災体験である。2011年3月11日、16歳だった彼は仙台の自宅近くのリンクで練習していたときに東日本大震災に見舞われ、避難所生活を経験した。

「それから拠点を神奈川に移して練習を再開することになっても、自分だけ逃げ出してスケートさせてもらっていいものかと悩んだ……そんな真面目な青年なんです。その3年後、金メダルを取ったわけですが、日本人の五輪好き、金メダル待望論は相当なもので、羽生は連覇して当然ぐらいに思ってませんか(笑)。彼の感じているプレッシャーは計り知れませんよ。『平昌で最後』という彼の言葉は、それからは自分が滑りたいように滑ります、という意思表示なんじゃないかなと思うんです」(アマスポーツ担当記者)

 前出のベテラン記者は今後の展開をこう読む。

「女子の浅田真央と男子の羽生は二枚看板。スターがいないと注目度がガクンと落ちます。スケート連盟は、男子は高橋大輔が引退し、羽生に頼りたいはず。『ハーフハーフ』と言って休養していた浅田が復帰しましたが、連盟は羽生に対しても3年後、とりあえず休養して考えてみたら、と引き留めるでしょう。羽生は、先手を打っているような気がします。実は彼は3年前に出した本でも『大きな目標は、オリンピックで金メダルをとって、そして引退……金メダルを考えているのは、ソチの次のオリンピックです』と語ってました。目標の一つ前の五輪で金を取ってしまったわけで、モチベーションの維持が大変だと思います」

 優男に見えて実は有言実行型のユヅくんが描く、自分なりのストーリー。今後の展開から目が離せない。

(岸本貞司)

週刊朝日 2015年8月21日号