「この事実は米国の政府高官も認めています。ですが、日本政府が取り合わず、県外移転案は立ち消えになりました。私が当時の防衛庁首脳に問いただすと、『本土はどこも反対決議の山だ。どこが受け入れるというのか』と答えました。しかし、反対決議を可決していたのは沖縄県議会であり、他の都道府県ではありません。沖縄の世論はつねに無視されているのです」
政府の不誠実な対応は現在でも続いている。
18日(日本時間)には米国ハワイ州オアフ島で、米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイが着陸に失敗して炎上、2人が死亡した。オスプレイは事故率の高さから「未亡人製造機」とも呼ばれていて、またしても危険性が明らかになった。
翁長知事は、事故原因の究明がなされるまで県内での飛行停止を求める考えを示したが、事故翌日には飛行が再開。沖縄県民を不安にさせている。
だが、沖縄以外の日本人も現実を直視しなければならない日がやってくる。
12日(同)には、米国国防総省が21年までに東京の横田基地(東京都福生市など)に10機のオスプレイを配備する方針を発表した。
事故後の舛添要一東京都知事の記者会見では、配備を見直すつもりがあるかを問う質問も出たが、
「国が(安全対策を)しっかりやってくれることを常に国に要求していく」
と言うにとどめ、見直しは求めない考えを示した。
沖縄と同じように、首都圏の空にもオスプレイが往来する日も近い。しかも、横田基地に配備されるのは、空軍特殊部隊のCV22オスプレイで、夜間訓練が多いことから、MV22に比べて事故率が3倍以上高いといわれている。ひとたび住宅街に墜落すれば大惨事になりかねない。
問題はそれだけではない。事故が発生したときの処理は、日米地位協定で日本と米国がどのように対応するか決められている。協定に詳しい前泊博盛沖縄国際大学教授は言う。
「協定では、事故が発生した場合の事故機の残骸と部品は、米国が管理することになっています。つまり、日本の警察は事故機に近づけず、原因の調査もできません。首相官邸や国会議事堂に墜落しても、日本人は外側から見守ることしかできません。沖縄で起きてきたことが、本土でも起きるようになるのです」
(本誌・西岡千史)
※週刊朝日 2015年6月5日号より抜粋