近年、農系学部の注目度がぐんぐん上がっている。泥臭いイメージは今や昔。特に女子学生からの支持が高いのが特徴だ。この少子化の時代に、新たに農系学部を設置する大学も目につく。龍谷大学(大津市)もその一つ。人気の秘密を探った。
同大学にとっては、生き残りをかけた学部新設だ。佐藤研司副学長は、
「18歳人口が減り続けていく中、大学の収入をどう確保していくかを学内で検討したとき、現在の学部編成でいいのかという議論になった。これから先の社会の動きを見据えたとき、重要なテーマのひとつに食糧の問題があった。日本の農業の現状を見ると、コアになる人材がいなくなっている。需要があると思った」
と、農系学部に勝機を見いだした理由を語る。学部新設を発表した2012年春はちょうど、国会で環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が話題になっていた時期。日本の農業のあり方を考えようという機運が高まっていた。
「われわれにとっては、フォローウインド。後ろから吹いてきた風にうまく乗っかれた」(佐藤副学長)
農系学部でも名称を「生命○○学部」「バイオ○○学部」などとしている大学が多い中、あえて「農学部」として、真正面から農業に取り組む姿勢を打ち出した。学科は、農作物の仕組みを学ぶ「植物生命科学科」、育てる技術を学ぶ「資源生物科学科」、栄養素と健康の関わりを学ぶ「食品栄養学科」、食物を取り巻く社会問題を学ぶ「食料農業システム学科」の四つ。広島大学理工学部から龍谷大に移り、農学部の教授に就任した古本強教授(植物生理学)は、
「食物の育て方、栄養素のこと、流通のこと。それぞれの専門性だけを高めても日本の農業は廃れてしまう。横断的なカリキュラムを組んで幅広い知識を持った人材を育てたい」
と意気込む。初の学生募集となった今年の一般入試では、定員220人に対し、志願者は約3800人と滑り出しは上々。大学全体の志願者数も前年比2割増しだ。