人気を呼んだ理由は、大学側の農業に対する熱意が伝わったことはもちろんだが、学生側のニーズとマッチした部分も大きいようだ。教育情報会社「大学通信」の安田賢治常務取締役は、
「人気の理系で最難関は医学部。そこに入れないと次は薬学部だが、6年課程となり、経済的負担が増した。おのずと、食品メーカーなどに安定的に就職ができる農系学部に注目が集まっているのだろう。それほど大学数が多くないため、学生が全国から集まってくるので、大学の生き残り戦略としても正しいだろう」
と話す。大学通信によると、14年の全国の大学の学問分野別合格倍率(志願者数を合格者数で割った数字)は、農系学部は4.0倍。医学部の10.4倍、薬学部の4.7倍に次いで高く、文学部と法学部の2.9倍を上回る人気ぶりだ。
新潟県では、農業系の専門学校などを運営するNSGグループの学校法人新潟総合学園が18年度、新たに農系学部のみの「開志大学」を開設する予定だ。経営が難しくなりつつある地方で、しかも単科大学の開設。さらに、県内には国立の新潟大学に農学部がすでにあるという異例づくしの状況だが、新大学設置準備室の矢田広視室長は、
「北信越地区には、私立の農系学部がない。従来、首都圏に流れていた学生や、新潟で農業を学んでみたいという学生がいると読んでいる。実学を重視したカリキュラムを組み、特色を出したい。地元の農協や役場などの就職先もあり、学生は確保できるだろう」
と、自信を見せる。
そんなニーズをいち早くキャッチして始動しているのは、吉備国際大学(本部・岡山県)だ。13年4月、兵庫県南あわじ市に「地域創成農学部」を新設。「生産者(第1次産業)、加工業者(第2次産業)、流通業者(第3次産業)を一貫して行う『第6次産業』としての農業」を掲げ、約100人の学生が学んでいる。眞山滋志学部長は「第6次産業化はレストラン経営やツーリズムなど、新しいビジネスや雇用の創出につながる」と話す。
※週刊朝日 2015年4月17日号より抜粋