東京大と京都大が昨年相次いで入試改革の概要を公表した。東大は推薦入試、京大は特色入試だが、いずれも「超高校級」の学生集めが話題となった。その後の動きを追った。
東大は今年3月を最後に後期入試を全廃し、その代わりに今秋から推薦入試を始める。その流れは、願書受け付けが11月上旬、約1カ月後に第1次選考合格者を発表し、12月中旬に面接などに進む。志望者全員にセンター試験を義務づけ、授業についていけるかの基礎学力はここで判断される。目安となる得点は8割、720点程度(医学部医学科は780点程度)だ。
志望時の学部の選び方にも特色がある。一般入試で科類を選び入学した学生は2年次に学部を決める「進学振り分け」があるが、推薦入試では出願時に学部を決める。それだけ明確な目的意識を持った学生に入学してほしい意思の表れだ。
「今までと違うアクティブな学生が入ることで、一般入試で入った学生の刺激になり、いい影響を与えられるでしょう」と、副学長で入試企画室長の福田裕穂教授は期待を込める。
「それによって学部教育をさらに活性化させ、将来、グローバルに活躍できる人材を育てたい」
一方の西の雄、京大では、来年の入試から特色入試を導入する。法学部や文学部、理学部、工学部など10学部すべてで高校時代の幅広い活動などを評価する。枠は108人で入学定員の4%弱。
一昨年5月、京大のシンボル、時計台のそばにある古いれんが造りの建物に、一枚の看板が掲げられた。
「入試改革検討本部」
ここが特色入試準備の最前線だ。職員らは高校からの問い合わせ対応や各学部と連携したサンプル問題作成などに追われてきた。
「従来のセンター試験や2次試験への対応もあり、この数カ月、教職員は血のにじむような思いで取り組んできました」
と、北野正雄副学長は明かす。特色入試のもっとも早い学部・学科の出願まであと7カ月。準備は佳境だ。
昨年3月末の概要発表で特に注目を集めたのが、医学部医学科の「飛び入学」だった。優秀な高校2年生を、卒業を待たずして受け入れる。「とんがった人材、世界の医科学をリードできる人材」の獲得が目的という。
ただし、この枠に出願できるのは、数学や物理、化学、生物の国際科学オリンピックに“日本代表”として出場した高校生だけ。求めているのは世界レベルの若者だ。
旧7帝大のうち、東大・京大を除く5大学では、2000年度の東北大などを皮切りに、すでに推薦入試やAO入試などを広く採り入れている。今回、国内最難関の両国立大も、学力だけによらずに入学者を選ぶ入試改革に踏み込んだのはなぜか。
背景に学生の均質化への危惧があるという。
「タフでグローバルな東大生」(東大・浜田純一総長)、「世界を牽引するグローバルリーダーを目指す人」(京大・北野副学長)といった言葉の裏には、学力試験でまんべんなく高得点を取れる「受験秀才」に学生が偏っているという、現状への思いがにじむ。
(庄村敦子)
※週刊朝日 2015年3月20日号より抜粋