消費税8%、世間に“生活防衛”ムードが漂うなか、「今年こそは家計簿をつけよう!」と意気込んだ人は多いだろう。しかし、その一方でこの時期は実は続かない理由がある。

「お正月は残念ながら家計簿のスタートには最悪の時期。3日で挫折する要素がたくさんあるんです」

 そう語るのは家計簿に詳しいファイナンシャルプランナーの大木美子さんだ。

「帰省や親戚の接待などのイレギュラーな出費に加え、お年玉やお賽銭などレシートのない支払いが増える。詳細不明なまま財布は空っぽ、家計簿をつけ始めたとたんに収支は赤字。だから嫌になってしまうんです」

 なるほど。これからつけ始めても遅くないということか。それでも挫折を繰り返すのがパターン化している人もいるはず。その原因を大木さんは、家計簿の“選び方”の失敗と見る。

「残高欄があると収支が合わずにイライラしたり、月初めから赤字がわかって嫌気が差したり。出費の費目が細かすぎると、どの欄に書き込めばいいかわからず、挫折につながります」

 たとえば友人と映画を見てお茶をした場合、映画代は娯楽費か交際費か、お茶代は食費か交際費か嗜好品費か、などが迷いを誘うというのだ。

 挫折の常連だった主婦リカさん(仮名・47歳)は3人の娘を育てる母親。11年前、子どもたちの入園や入学が重なった際に「どんぶり家計から卒業を」と一念発起し、市販の家計簿をつけ始めた。ところが費目があまりに細かく、結局レシートをため込んで、1年分をつけ終えるのに3年間もかかってしまった。

「でも1年分を眺め直すと発見は多かったですね。被服費に100万円、夫が好きなワインにもお金をかけすぎていた。数字が出たからこそ夫婦で冷静に話し合い、夫はワインの出費を控えるようになりました」

 その後もレシート類はきっちり保管し、さまざまな家計簿やスマホのアプリ、パソコンソフトなどを試したが、1年間をつけ通せたのはあの1回だけ。

「今気に入っているウェブの家計簿サービスが二つあるんですが、どちらも一長一短。だから2014年中に受け取ったレシートもほとんど手つかずのまま積み上がっています(苦笑)」

 やはり家計簿をつけ続けるのは相当ハードルが高そうだ。それでも、取っつきやすい方法を考案し、自らの家計簿13年間分をホームページ上で公開する人がいる。wakabaさん=ハンドルネーム=だ。

「家計簿をつけ始めたころ、主婦向け雑誌で見た別の読者のを見て気がめいりました。4人家族の食費が2万円と信じられないほど少額で、光熱費もわが家よりずっと安い。自分が本当にダメな主婦に思えました」

 やりくり下手な自分でも家計簿をつける価値はあるはずと、wakabaさんはあえて記録を人目に触れさせた。その際、[1]食費は単に安ければいいわけではない[2]光熱費の節約は最新の省エネ家電に買い替えるだけ[3]毎月の収支が合わなくても不明金として処理する、などの“割り切り”を貫いた。

「大まかな支出を把握した上で、マイホーム資金がためられればいいと。だから続けられたんです。銀行にいくら、郵便局にいくら、財布にはこのぐらいと、すべてのお金を常に把握できるようになっただけで安心感が生まれました」

週刊朝日 2015年1月16日号