顔はカーッと熱いのに、足はゾクゾクする。頭はボーッとのぼせているのに、手を触るとヒヤッと冷たい。最近、そんな症状を訴える人が増えているという。
「それは『冷えのぼせ』と言われる症状です。体が長期間冷え切って重度の冷え症になると、逆に上半身がカーッと熱くなることがあります。この冷えのぼせが、ただの冷え症よりも厄介だということで、最近話題になっているんです」
こう教えてくれるのは、目黒西口クリニック(東京都品川区)の南雲久美子院長。同クリニックには、冷え症で悩む患者が連日訪れるが、最近はそのほとんどが、実は「冷えのぼせ」だという。
20~50代の女性1万人を対象にした調査によると、冷えを感じているのは63.6%、そのうち32.7%が「冷えのぼせ」だと自覚している。冷え症の実に半数以上、全体の3分の1が冷えのぼせということだ。
中には、こんなことを訴えてくる女性患者もいた。
「先生、私、自分が寒いのか暑いのかわからなくて困ってるんです……」
40代後半のその女性は、なんと真冬なのにキャミソール1枚! で、顔に汗をかきながら来院。しかし、下はズボンを重ねばきしていたのだそう。
なぜ体が冷え切っているのに「のぼせ」という真逆の症状が出るのか?
「体のメカニズムとして、冷えを感じると頭部の温度が下がらないように体温を調整する機能があります。だから手や足の末端が冷えると、頭を温めようとする働きが起こるのですね。手足が冷えれば冷えるほど、頭のほうはどんどん熱くなります。この両極端の状態が長く続くと、交感神経と副交感神経が異常に頻繁に交代するようになり、自律神経の乱れが生じます。冷えのぼせは、いわば自律神経失調症型の冷え症なのです」(南雲氏)
冷え症のうちの冷えのぼせ率を年齢別にみると、50代が56.8%でトップ。2位は20代で53.7%。次いで40代、30代となる。冷え症と言えば年配の女性に多いイメージだが、冷えのぼせは若年層にも多くみられるのだ。その理由を、南雲氏はこう語る。
「若い人は赤ちゃんのときからエアコンのきいた環境で生活しているので、慢性的な冷え症になっていることが多いのです。それに加えて、寝る寸前までスマホをいじっていて睡眠不足だったり、外食が多かったり、冬でも薄着だったり。こういった若い人ならではの生活習慣の乱れが冷えを助長し、冷え症の若年化を後押ししているのでしょう」
一方、50代女性の場合は更年期障害と混同している可能性もある。頭や顔がカーッと熱くなったり、体を動かすと汗がドッと出たりするのは、更年期障害とよく似た症状だ。
下のチェックリストに当てはまる項目が多ければ、冷えのぼせの可能性を疑ったほうがよいだろう。
◇「冷えのぼせ」チェックリスト
一つでも当てはまれば「冷えのぼせ」の可能性あり。当てはまる項目が多ければ要注意と考えよう。
・胸より上は冷えを感じないが、手足は冷たい
・手足が冷えているのに、頭だけがボーッと熱くなることがある
・気温・運動などの暑くなる条件があると、胸より上がカーッと熱くなり、汗がドッと出る
・冷えの自覚はないが、冷たいものを食べたり飲んだりするとトイレが近くなる
・手のひらや足の裏にじっとりと汗をかく
監修:南雲久美子
(ライター・伊藤あゆみ)
※ 週刊朝日 2014年12月12日号より抜粋