寝たきりの原因にもなる首、腰、ひざのトラブル。意外と知らない対処法を、専門医に解説してもらった。
Q1 X線に写らない痛みがあるってホント?
A 腰痛の85%は画像検査で原因がわかりません。
整形外科では、問診、触診の後、必要に応じ、X線検査、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴断層撮影)などの画像検査をおこない、骨や関節、筋肉の状態を確認します。
「たとえば、画像検査で確認できる腰痛の原因はわずか15%だといわれています。骨が折れている、関節がずれているなど、明らかな変形や病変は画像でわかりますが、画像上でトラブルは確認できないけれど、『痛い』というのは、よくあることです」(江戸川病院慶友人工関節センター長泉田良一医師)
つまり腰痛の85%は「X線に写らない痛み」なのです。しかし画像検査で異常がなかったから問題がない、とはいい切れません。どういうときに、どこが痛むのか、どういう姿勢のときに痛みが強まるかなど、丁寧に問診をすることで、原因を推測することができます。
「『火のないところに煙は立たない』というように、全く原因がないのに痛みが出るとは、考えにくいですよね。画像検査だけに頼るのではなく、きちんと患者さんの訴えを聞くことで、初めて正しい診断ができるのです」(同)
正しい診断のため、画像検査は必須です。でも画像検査でわからないこともあります。
Q2 椎間板ヘルニアは自然治癒するってホント?
A 95%は自然治癒するといわれています。
腰に負担がかかって椎間板が圧迫され、髄核(ずいかく)という芯の部分が飛び出たものが、腰椎椎間板ヘルニアです。椎間板ヘルニアになると、椎間板そのものが損傷すること、飛び出した髄核が神経を圧迫することの両方で、痛みを感じます。
「痛みの原因のうち、髄核が飛び出したことによるものは、普通のけがと同じで、安静にしていれば1~3週間ぐらいで治ります。椎間板ヘルニアによる神経の圧迫の痛みは、圧迫の強さによって腰や下肢に痛みを感じる強さ、期間が異なります。大きさにもよりますが、椎間板ヘルニアは95%が自然治癒するといわれています」(伊奈病院整形外科部長石橋英明医師)
けがや手術で縫合した後の傷などは、初めは盛り上がっていても時間が経つとほとんど平らになります。椎間板ヘルニアも同じで、時間の経過とともに小さくなっていくことがあるのです。
「完全に飛び出した椎間板ヘルニアの3~5割は、自然に消えてなくなるといわれています。しかし強い痛みが続く、筋肉の麻痺や膀胱障害が起きた場合は早めの手術が必要になります」(同)
椎間板ヘルニアは自然に治ることが多く、手術が必要な人は、そんなに多くありません。
※週刊朝日 2014年11月7日号より抜粋