「相談?偽善者に何を言えばいいんだ」という遺書を残し自殺した、兵庫県の中2男子の両親が、その真相を本誌に告発。教育現場への不信を語った。自殺したのは、兵庫県たつの市の市立中学に通っていた万壽本(まんじゅもと)拓也君(当時14歳)。自殺当日の2月22日は土曜日で学校が休みだった。
勉強机の上から2番目の引き出しからは原稿用紙にしたためられた「遺書」も出てきた。
<人間しょせんは一人 死ぬときも生きるときも 相談?偽善者に何を言えばいいんだ。ばあちゃんへ てつだい行けんでごめんな これからも行けそうにないわ>
母の圭美(たまみ)さん(43)は言う。
「拓也の携帯には『生き地獄耐えられない』と書いてあったけど、そんなに思い詰めるほど、何がつらかったんかなと思いました」
武司さんは拓也君が自殺する3時間前、最後の会話を交わした。
「漫画の本を読んでいたから、普段と一緒でした。『ご飯食べたんか。学生服、お前のも洗おうか』と声をかけたら、『大丈夫』と答えた」
両親は「何があったのか」と学校に尋ねた。
「学校側は具体的なことはわからないと言うばかり。何か隠しているのではないかと思いました」
武司さんは校長、教頭、市の教育長に生徒や保護者にアンケートをしてくれるように要求した。アンケートは実施され、武司さんは学校に提出される前、生徒宅を回り、アンケートをコピーして集めた。約二十数枚のアンケート用紙から、息子の“死の動機”が浮かび上がった。
思い当たったのは、1カ月前の「暴力事件」だ。
「1月27日放課後、拓也は隣のクラスのA君に頭突き、顔を殴るなどし、鼻の骨を折るケガをさせた。私も呼び出されて学校へ行ったんです。当日、周りの生徒にはやし立てられてケンカせざるを得ない状況になったようです」
A君は保健室から救急車で病院に運ばれた。
「その当日、病院から戻ってきたA君と会いましたが、鼻も目も腫れていた。A君の父親は『これは一方的やから被害届出させてもらいます』と怒っており、すいませんと謝りました」
翌日、A君の親は警察に被害届を提出。警察が学内に入ってきて、現場検証をする事態となったが、武司さんはこう憤る。
「学校側はケンカの翌々日、周りにいた生徒のうちに電話し、『被害届が出ましたから、警察から事情聴取があるかもしれません』と伝えているんです。ところが、うちにはそのような電話がなかった。学校は一度も、A君の親が被害届を出したこと、警察が現場検証や事情聴取をしていることを教えてくれなかった」
そして学年主任だった50代のB教諭に疑問を抱くようになったという。
B教諭は拓也君に毎週金曜日、マンツーマンで補習するなど熱心な先生だった。しかし、生徒、保護者への学校アンケートには、<B先生がA君に被害届を出すようにすすめた>と複数、記されていたのだ。
(本誌・上田耕司、平井啓子)
※週刊朝日 2014年5月23日号より抜粋