近年、グローバル人材育成や就職で役立てるために、英語教育に力を入れている大学が増えている。しかし、大学が英語教育に力を入れるのと裏腹に、企業側は「英語力」重視を疑問視しはじめているようだ。大手メーカー幹部がこう話す。

「TOEFLやTOEICの点数がよい学生を即戦力として採用したのですが、ビジネスの場に投入してみると全然使えない。職場でのコミュニケーションがとれなかったり、他社との交渉ができなかったり……。いわば『英語バカ』の社員が増えて、困った状況になっているんです」

 大学の英語教育に詳しい、慶応大学の大津由紀雄名誉教授が、こう解説する。

「能力テストの点数だけがいい『ハリボテ英語力』しか持たない学生が増えているのです。皮肉なことに、企業が求めているレベルと大学教育のレベルには大きなギャップがある。一流企業は、こうした点に気が付きだしています」

 では、このギャップを埋めるにはどんな手段があるのだろうか。グローバル人材の育成に詳しい、みずほ情報総研コンサルタントの田中文隆氏は「人材育成のためには産学連携をもっと進めていくべきだ」と指摘する。

「医学や理工系分野では、大学の基礎研究を実用化していくために、大学と企業の連携が活発化しています。ですが、学生と企業で働く人々がお互いに行き来するなど『人づくり』をテーマにした産学連携はあまりに少ない。大学と企業がお互いに接点を見いだして、協力していく体制をつくる必要があるでしょう」

週刊朝日  2014年3月7日号