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いよいよ開幕する全日本選手権。黄金期を迎えた男子フィギュアスケートの世界一厳しい代表選考会が始まる――。
18歳最後の夜だった。
高得点にわき上がる歓声とは裏腹に、羽生結弦(ゆずる)は首を振っていた。世界王者のパトリック・チャンをおさえてGPファイナルで優勝したにもかかわらず、「(点数は)出すぎ」「期待点だと思ってる」。
したたる汗まで絵になる若きエースは、至って冷静だった。
それもそのはず、ソチ五輪出場は、12月21日開幕の全日本選手権にかかっている。男子は、世界トップレベルの選手たちによる過去最高の混戦が予想されるのだ。ソチの主役と目される羽生も、気を抜けない。急成長を遂げた町田樹(たつき)や復調した織田信成が“枠”を狙う一方で、高橋大輔は、ここにきて右足を負傷。日本フィギュア界を牽引する高橋でさえ、絶対とはいえない状況なのだ。ソチへの切符を手に入れるのは誰か。スポーツライターの青嶋ひろの氏は、こう話す。
「最後は気持ちをコントロールできるかどうか。大事な局面で、怖がらずにアスリート魂で戦えた人が、残るのでしょう」
※週刊朝日 2013年12月27日号