「都内の墓不足」や「跡継ぎ問題」などの影響を受けて近年、お墓事情が激変している。ビルの中で参拝するハイテク墓地や木の下に埋葬する「樹木葬」など、新たなタイプのお墓が出現した。それだけでなく、「墓友」なるものまで現れ始めたのだ。
樹木葬を生前購入した人に話を聞いた。神奈川県相模原市に住む吉田早苗さん(仮名、71)。北海道出身で、夫(66)と2人でお墓を探していたが、どの霊園も、墓を守る跡継ぎが絶えた無縁仏が多くて、一般のお墓を買うのは諦めたという。
「散骨も考えたんですけど、手続きが大変だとわかったんです。娘と息子には、お墓のことで面倒をかけたくはありません。自然に返る樹木葬を知ったときは、『コレだ!』と思ってすぐに決めました」
吉田さんには、「墓友」ができたという。
樹木葬は、集合墓地の一種。見学に行くうちに周囲の区画に埋葬される人たちと仲良くなって、週1回の習字サークルに通ったり、旅行に行ったり、食事をしたりと、充実した時間を送っているという。
「死んだらご近所さんですから。『アチラに行ってもよろしくね』なんて言ってますよ(笑)」(吉田さん)
樹木葬の企画をしたNPO法人エンディングセンターの理事長で、東洋大学の井上治代教授(社会学)が言う。
「昔は息子夫婦も一緒に暮らして高齢者は心が安らかだったけど、いまはそうではない。『墓友』と楽しく過ごしていれば、心は穏やかになるのでは」
※週刊朝日 2013年11月15日号