ストレートに注意すると折れちゃう男が多いと嘆く女性たち。文筆家・北原みのりさんの友人が実践している男性への気遣いとは?
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近所のクリーニング屋さんは、気前がよい。ワンピースを出すと必ず「ワンピースは高いから、裾の長いブラウスってことにしちゃおう!」と半額にしてくれたりする。明るくて気前がいいオジサンだ。
ただ一つ、どうしても気になることがあった。オジサン、仕上がった服をビニール袋に入れる時、必ず指を舐めるのだ。それは、耐えがたい行為なのだった。
で、これからも気持ちよくクリーニングをお願いするためにも、ついに意を決して私は伝えることにした。極めて明るく、今気がついたんだけどっ! という体で、オジサンが指を舌に持っていこうとする正にその瞬間に!
「あっ! それ、やめた方がいいかもしれないですね! 清潔じゃないかも」
何を言われているのか、オジサンは一瞬分からなかったみたいだけれど、私が指を舌にあてる仕草をすると、はっとして、顔を曇らせた。そしてみるみるうちに、テンションが下がっていくのが分かった。しまいには「はい」と、暗い声で突き出すように服を渡し、「ありがとう」すら言わなかったのだ。
その話を女友だちにすると、「いるいる~、そういう男~」と言って大笑いされた。昔の彼氏にそっくりなのだそうだ。セックスで全く気持ちよくないことを得意げにやってくるので、「それ、女は痛いよ」と教えてあげたところ、激怒したという。「今まで、そんなこと言われたことない」とか「痛いと言うお前がおかしい」とまで言ってきたとか。彼女が言うには、ストレートに注意すると折れちゃう男が多いので、たとえ痛くても、「ああっ、気持よすぎて痛いかも」くらいのことを言うようにしているのだそうだ。 ……大変だね。
ちなみに先日クリーニングを出しに行ったら、オジサン、ブラウスをワンピースに間違える、という荒業をやってのけました。男の恨みを買うと怖いね。しかし、あの場合、私はなんて言えばよかったんでしょうか。「ああっ、その指、ステキすぎるけど、その唾液もイヤじゃないけど、刺激が強すぎて……止めてくださるぅ?」とかですかね? 男の人とのつきあいは、ホント、難しいです。
※週刊朝日 2013年11月1日号