ますます関心の高まる“終活”。自分だけでなく、家族のためになる終活とはどんなことをいうのだろうか? 農家に嫁いだ佐々木美子さん(仮名・50)は、同じ敷地内の隣の家に住んでいた義理の母を2006年に、義父を09年にそれぞれ亡くした。行事の際には親戚一同が集まる、昔ながらの大きな家には、相応の量の遺品もあった。
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農家だから、敷地が広いんです。家には収納スペースもたくさんあるし、義母が物を捨てられない人だったから、それはもう片付けが大変でした。
義母はおしゃれな人でしたので、洋服が山のようにありました。それに押し入れからは座布団が50枚、ポットが6個、祖父が着ていた軍服まで出てきました。畑仕事で使っていたのであろう廃材も、納屋に残っていました。一つひとつ吟味する余裕はないから、取っておくものにフセンをつけて、あとは片付けの業者に処分してもらいました。全部で、2トントラック6台分になったでしょうか。処分の費用は90万円ほどかかりました。軍服はどうしていいかわからないので、取ってありますが。
でも、義母の物持ちの良さが功を奏したこともあったんですよ。内祝いなどでもらった30年分の毛布やタオルケットが、箱に入ったまま大量に残っていました。その中でも奇麗なものを選んで、東日本大震災のときに被災地へ送ることができたんです。
結局、片付けには半年ほどかかりました。捨てられない気持ちもわかりますが、物を捨てるのにもお金がかかる時代。もし自分が捨てられない人なら、遺族のために少し処分用のお金を用意しておいてあげるといいかもしれません。あとは、年を取ったらいい物を少しずつ持つことを心がけるといいと思います。
義父が亡くなったあとに、相続で少し問題が出ました。義父は亡くなる前に、家族を集め、どう相続したいかを話し合っていました。そのときは皆、同意したんですが、口約束だけだったので、実際に相続する際に異論が出てきてしまいました。
その後の話し合いは緊張しました。相続で見苦しいケンカだけはしたくない。家族で冷静に話し合えるよう、事前に具体的な数字のデータを整理してから臨んだので、大きな問題になることもなく解決しましたが、やはり遺言書があればよかったな、とも思います。
すごく助かったのが、義母が、自分と義父の遺影を用意してくれていたこと。義母は、気に入った写真が撮れると、それを遺影にし、仏壇の横に置いておいてくれたんです。おかげで、お葬式のときに、遺影をどれにしようかと慌てなくてすみました。遺影をどこに置いてあるかを伝えておいてくれたのもよかったですね。棺に納めるときに着たいものの希望を伝えてくれてあればさらに助かったかな。なかなか考えが及ばないと思いますが、送る者としては意外に悩んだ点でした。
※週刊朝日 2013年11月1日号