ドラマ氷河期といわれるなか好調なのが、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」とTBS系列の日曜劇場「半沢直樹」。何が視聴者を引きつけているのか。本誌は20歳以上の500人にウェブアンケートを実施し、どちらに元気をもらっているのかなどを尋ねた。
「あまちゃん」の主な登場人物を示し、誰に最も元気をもらっているのか尋ねた。男女とも主人公の天野アキが断トツ、次いで母の春子だった。
「透明感があって、キラキラしてるアキが可愛い」(44歳・主婦)、「アキが輝いている姿を見て励まされる」(43歳・男性、自営業)など、純情すぎるほどに目標へ突き進む様子に元気づけられるという声が多い。NHKの訓覇(くるべ)圭プロデューサーは、「撮影が始まると、いつしかアキと能年さんの区別がつかないぐらいになった。それぐらい自然なんです」。 能年はオーディションで選ばれたが、その演技に「いまは200点あげてもいい」と力をこめる。
「『あま』の誰に最も感情移入しますか?」という問いでは、男女ともに春子への票が前問から一気に増えた。とくに女性は倍増で、春子がアキを抜いた。「同世代として母親の気持ちもわかる」(40歳・女性、サラリーマン〈一般社員〉)という意見に代表されるように、親世代の共感も呼んでいるのだ。春子については、宮藤官九郎さんがあらかじめ小泉今日子をイメージしていたそうだ。
「スーパーアイドルの小泉さんに、アイドル志望を断たれた母役を頼むのは勇気がいりました。ましていままでの朝ドラにはない母親像。小泉さんと一緒に、とてもデリケートになって撮影しています」(訓覇さん)
春子はすごく怒るし、激しい言葉も吐く。アキに対しても怒ることが愛情表現だったりする。そうした女性を、小泉は「キョンキョン」らしさを残しながらチャーミングに演じている。春子に一方的な思いを寄せ続ける大向大吉(杉本哲太)や「あんべちゃん」こと安部小百合(片桐はいり)など、個性的な面々もドラマを盛り上げる。
「半沢直樹」の登場人物についても尋ねた。「最も元気をくれる」のは主人公の半沢直樹で、男女とも70%を超えた。「半沢直樹を演じる堺雅人の眼力がすごい」(58歳・男性、自営業)、「上司にまっすぐに意見する半沢直樹は、自分にはできない生き方をしていて憧れる」(44歳・女性、派遣・アルバイト)
2位も男女とも上戸彩演じる直樹の妻、花だ。「殺伐とした男性社会の描写が続く中で、彼女の無邪気さが元気をくれる」(52歳・主婦)との声が多い。
TBSの伊與田(いよだ)英徳プロデューサーによると、堺については以前の日曜劇場「南極大陸」での演技力に惹かれ、上戸は「現代風な奥さん」のイメージで選んだのだという。「専業主婦でもプライドを持ち、男性と同等かそれ以上に堂々と振る舞える女性像がぴったりでした」。
堺と上戸はそれぞれ、プライベートで新婚さん。これも注目される要因になっている。
感情移入する登場人物では、直樹とともに焦げ付いた5億円の回収を狙う竹下清彦(赤井英和)や、問題の5億円をだまし取った男の愛人・藤沢未樹(壇蜜)の名前も挙がった。
最後に「あま」と「半沢」のどちらに、より元気をもらえるかを尋ねた。結果(男女計)は「あま」が約64%、「半沢」が約36%で「あま」に軍配。
サラリーマンの役職別支持率を見ると、おもしろい傾向が出た。「半沢」の主人公・直樹と同じ課長・次長クラスだけが、「半沢」が「あま」を上回った。部長クラスと係長・主任クラス以下は、圧倒的に「あま」に元気をもらっている。「半沢」で直樹に突き上げられる部長クラスはドラマが現実になるのを恐れ、係長以下にとっては、直樹の痛快な反逆は、遠い世界に感じられるのだろうか?
※週刊朝日 2013年8月16・23日号