民主党のオバマ大統領に共和党のロムニー候補が挑む米大統領選。両候補が主張する「正反対」の政策がそれぞれ実行に移されたなら、米国経済は次の4年間、「正反対」の軌跡を描くのだろうか。専門家に予想してもらった。
米国の景気は、回復の兆しをみせているが、オバマ大統領の続投だとどうなるか。今後については、専門家の意見が分かれた。
米国株については、クレディ・スイス証券経済調査部長・白川浩道氏と三菱東京UFJ銀行ワシントン駐在員事務所長・寺澤英光氏は値上がりするとみるが、株の買い手である富裕層向けの減税終了を懸念するみずほ総合研究所政策調査部長・安井明彦氏は「株価にはネガティブ」とみる。
為替についても、「製造業の輸出に有利なドル安の政策が続く」とみる白川氏はドル安(円高)、寺澤氏は景気回復に連動してドル高(円安)に転じるとした。
一方、ロムニー候補が大統領に就いた場合はどうか。
課税対象を広げることから中・低所得者層の負担が重くなり、「米国内が混乱するのでは」(白川氏)との見方が強い。そしてこの税制改革は、米国の景気には逆風となりそうだ。福井県立大学の工藤進教授は、50年続いてきた「米国版福祉国家」の解体につながるとして、
「米郵政公社、公共放送、幼児教育、困窮層の食料購入費を対象にした生活補助など、各種の事業の予算が大幅に削減されるでしょう。富裕層も含めた減税を採用することで、貧富の格差がさらに拡大するのは間違いありません」
金融市場についは、白川氏、寺澤氏ともに、法人税減税と、ロムニー陣営が大規模な金融緩和の第3弾に反対していることから、株高、ドル高(円安)とみる。ただ、その動きは一時的とする見方もある。
「なにしろ財政のつじつまが合わない政策ですから、どこかにしわ寄せがいくのは避けられません。最終的に大増税がやってくるでしょう。危なくて投資できません」(欧州系の投資家)
ここまでの話をまとめると、どうやら、オバマ大統領のほうが米国の景気には都合がいいようだ。
※週刊朝日 2012年11月2日号