年子の場合、2時間おきに授乳が必要な0歳児に加えて、1歳児のお世話となります。ご飯も、上の子と下の子と自分の分を別々に作らなくてはなりません。夜に1歳児を寝かしつけても、0歳児が泣くと1歳児も起きてしまうので、やはり朝まで眠れない日々が続くとか。そのうえ家事もやっていたら、自分のためにつかえる時間なんて1秒たりともありません。
母親たちの間では、「双子と年子、どちらが育てるのが大変か」なんて議論が起きることもあるようですが、杏さんの場合、両方の大変さを同時にこなしていたわけです。さらにドラマの仕事もしていたのですから、尋常ではないほど過酷な日々を過ごしていたことは想像に難くありません。
杏さんはバラエティー番組で、「午後8時から9時の寝かしつけで、気絶するように自分も寝る」「午後10時から11時に起きあがり、それから家事を始める」と話していたそうです。
私は、もし一度でも東出さんがしっかり育児をしたことがあるなら、不倫をすることなんてあり得なかったのではないかと思っています。双子と年子の育児の実態を知っているなら、もはやサイコパスでもない限り、家事育児を妻に任せて自分だけ悠々と時間をとり、不倫するなんて到底できるはずがないのです。
パートナーが、体力的にも精神的にも、どれほどきつい思いをしていたのか。「わかろうとしない」どころか、「考えることさえできなかった」わけです。
■「育児に対する関心が低い」人たちが存在するということ
くり返しますが、今回の不倫は、単なる男女間のいざこざではなく、男女平等へ向かおうとしている今の社会への問題提起として捉えるべきだと思っています。
現在は、「子どもを育てるお金を稼ぐため」という理由で、社会進出する女性が増えています。それに比例して、家事や育児をする男性も増えています。しかし、妻も夫と同等に働いているにもかかわらず、依然として「家事や育児は女性がやるもの」という固定観念を主張し続ける人たちもまだまだいるのです。
もし夫が育児に参加する意思があっても、会社内で「家事育児は女性の仕事」と考えている人が多数であれば、育休もとりにくく、残業も断れないでしょう。今回の不倫騒動は、東出さんを擁護した芸能人を含め、「育児に対する関心が低い」人たちが存在するということを、くっきりと浮き彫りにした出来事でした。
メディアが報じる、「東出さんと相手の距離が日ごろから近かった」「相手が過去に雑誌で彼について語っていた」というような、不倫の証拠を裏づけるための話題なんて、関係ない人には本当にどうでもいいことです。それよりも育児に関して、さらに言えば杏さんがしていた「双子や年子の育児」が、いかに壮絶なものかについてクローズアップしてくれれば、多くの人が子育ての実態を知り、理解を深めてくれるきっかけになったと思います。
近年は結婚する平均年齢も高くなってきており、それにともない不妊に関する医療も発達してきています。そして治療法の中には、多胎妊娠になる可能性が高くなるものもあります。つまり、双子が生まれる割合は、今後、高くなっていくはずなのです。子どものために女性が働き、しかし育児の負担は女性が重いままで、さらに多くの子どもを育てるには、今の日本の環境だと背負うものが大きすぎるのではないかと思います。
杏さんは、昨年11月のベストドレッサー賞授賞式で、仕事と子育てについて「どうか皆さまで受け入れていただいて、助け合って、子どもを皆で育てていく世の中になっていけたら」と発言していました。今だからこそ、杏さんのこの言葉が胸に響く人は多いのではないでしょうか。