だが、世界的にみて、保守派や右派の経済政策とは言い難い。海外の保守派や右派は、政府ができるだけ民間の経済活動に介入しない「小さな政府」を志向し、財政・金融政策では「緊縮」を好む。安倍首相のやっていることはまったく逆だ。

 一方、山本代表は、「コンクリートも人も 本当の国土強靱化、ニューディールを」というメッセージを掲げている。防災対策などの公共事業を積極的に行うとともに、「奨学金チャラ」「最低賃金1500円」「消費税廃止」など、日々の生活に困っている人々にお金を行き渡らせる政策を掲げている。

 政策の実現のために、どうやってお金をひねり出すのか。山本が理論的支柱としているのが、立命館大のマルクス経済学者、松尾匡教授だ。

 松尾は日本のマルクス経済学者の中では、「異端」だ。アベノミクスの1本目と2本目の矢、つまり、金融緩和をして財政出動をすること自体は「反緊縮」であり、「間違っていない」と公言する。

 安倍首相と違うのは、お金の使い道だ。松尾は「安倍首相は、せっかくひねり出したお金を軍事費や、大企業やお金持ちの支援に使っている」と批判する。それらを、医療や介護などの社会保障、教育などに振り向けて、国民の生活向上に役立てるべきだと主張する。

 松尾は、2019年2月、市民運動「薔薇マークキャンペーン」を立ち上げた。「(お金を)ばらまく(薔薇マーク)」と引っかけたネーミングだ。この年は12年に1回の「亥年選挙」の年。この年に行われる参院選では自由民主党が苦戦を強いられると言われているため、春の統一地方選と夏の参院選を前に、松尾らの主張に賛同する野党の候補者に「薔薇マーク認定」を与えて、支援しようと企画した。

 この運動にいちはやく呼応したのが、山本代表だった。山本は、れいわ新選組の政策に松尾の主張を全面的に採り入れた。

 松尾の主張は、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が提唱する新しい貨幣理論「現代金融理論(MMT)」の影響を受けている。これは、海外の左翼の間で、流行している理論だ。

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